蛍光灯リサイクル水銀回収装置
廃蛍光管を100%リサイクル
他工法に比べ、早くて低い温度で水銀を分離


和泉商事(株) 和泉重浩常務取締役

 体内に吸収すると多大な悪影響を与える水銀。日常生活で欠かせない蛍光灯にはこの水銀が含まれており、安全な処理体制の整備が急務となっている。そんな中、効率的に水銀を回収し、さらに廃蛍光管を建築資材やガラス製品などの素材へと100%再生できる「リサイクル工場」が昨年10月、八代市に誕生した。
 熊本県内初となるこの施設は、熊本市の鋸a泉商事リサイクルが八代外港工業団地内に開設したもの。「蛍光灯リサイクル水銀回収装置」により、水銀の適正処理と環境循環型社会の実現を目指し、同年11月から本格的に営業している。
 この回収装置は、三愛(熊本市)と日揮プランテック(横浜市)が、横浜国立大学の堀雅宏教授の協力を得て共同開発したもの。現在、このシステムを導入しているのは日本でこの工場だけだ。
 蛍光管は、主にガラスとアルミニウムの口金で作られている。ガラスには、蛍光紛が含まれており、その粉に微量の水銀が吸着している。処理工程は、破砕したガラスを慎重にクレーンで反応槽に運び、頑丈な蓋をして破砕したガラスを500度前後で加熱。水銀を気化させて、ガラスと分離させる。加熱して気体になった水銀を装置で冷やし、固形化して回収する。処理後のガラスくずは、建築資材等に再生される。
 「最大の特徴は、他の工法に比べ、早くて低い温度で水銀を分離できること。しかも、水を使用しないため、汚染の心配が全くない」と和泉常務。堀横浜国立大教授も、現段階では一番適切な方法ではないかと考えている。
 平成19年度における全国の年間の蛍光管生産量は、バックライトを除き約3億本で、このうち熊本県は約400万本と試算。うち、適正処理されてるのは、20〜30%程度という。
 同工場では、昨年11月に約7000本、12月に約1万5000本を処理。今年は年間約15万本を目標に掲げている。「この工場で1年間に処理できる数は約100万本。フル稼働すれば、熊本県で廃棄される蛍光管の4分の1を処理することができる」と意欲を燃やす。
 現在は、県内外約20社の産廃収集業者から蛍光管を回収しており、今後は、県内市町村の一般廃棄物回収も視野に入れている。
 「廃蛍光管の中でも水銀灯の処理ができるのは、全国でもこの工場だけ。 これからは、付加価値の高い引き取りも行っていきたい」。 安全・安心な循環型環境への確かな一歩として期待が寄せられる。
2010.10.12掲載

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