屋上緑化システムで市場開拓
  地球環境に着目。民間施設から公共への広がり目指す
(株)アイエスティー(熊本市) 高野 眞造氏


 電車通り沿いの分譲マンション「優渾水前寺公園」の屋上一面に、青々とした本芝の庭園が誕生した。屋上緑化は、東京都が一定規模以上の新築建物での義務化条例に踏み切り、都に追従するかたちで全国的な広がりを見せている。現在、熊本市を含む30以上の自治体が助成や低利融資を行っており、地球温暖化防止とヒートアイランド対策の切り札となってきた。
 施工したのは、交通安全施設工事を主に手掛ける地場建設業者の(株)アイエスティー(熊本市尾ノ上2-17-10、高野眞造社長)。昨年6月、大栄ロード工業(株)から社名変更したのを機に環境事業部を立ち上げ、屋上緑化という環境ビジネスに進出した。
 公共事業費が削減され、いろんな会社が倒産していくのを見て、生き残り策を模索。「従業員のためにも新たな事業展開が必要だが、これまで建設業に携わってきて180度違う分野に進出するにはリスクが高すぎる。実績と経験を生かし、人から感謝されるものはないだろうか」という思いから、これまで関心があった環境に着目した。
 きっかけは、阪田末好氏(サカタ工業(株)社長、佐世保市)との出会いから。長崎大学と共同で屋上緑化用ブロックSGコートの開発を進めていることを知り、そこで、土を全く使用せずに芝が育つという事実に驚嘆した。「コンクリートは土を嫌うし、芝生なら憩いの空間も生まれる。これまでの常識が覆された」
 施工方法は、多孔質の天然鉱石とセメント、廃材を配合した縦横30cm、高さ6cmのブロックを並べるだけ。底に5本の円柱形の脚があり、通気性と保水性を確保している。密着しないため、湿気に弱い防水層を保護。通常8〜10年でやりかえるものを10年以上に延ばすことができる。空気の層で熱を遮断、3〜8度の断熱効果により冷暖房費の削減も。
 昨年6月に熊本県代理店となり、今年2月には同製品が特許を取得。本格的な営業展開を行っていないにもかかわらず、これまでの試験施工などが口コミで広がり、九州各地から問い合わせがあるまでになっている。
 もっとも、環境に積極的に取り組んでいる自治体や大都市に比べ、熊本県内での屋上緑化への認知度は、建築主、設計者、施工者のいずれも浸透しているとは言えない。公共施設で行政がモデル的に設置できれば、周知できるだろうが、財政的な事情もあり、民間建築から火を付けていくしかないのが現状。
 「屋上緑化が義務化されれば、今後5年間は確実に伸び続ける分野。設計段階から屋上緑化を盛り込んでもらい、マンションだけでなく、学校や福祉施設、医療施設などに、屋上緑化による癒しの空間づくりを提案していきたい」。
 今国会に緑化率規制の導入を含む都市緑地保全法一部改正案が提出され、年内にも施行される見通しとなっており、今後、注目されるのは間違いない。“民間から公共へ”、従来の発想を転換し、社会的な追い風を需要に結びつける。
 新社名は、International Safety Technologyの頭文字から付けた。これまで道路標識など公共交通の安全に携わってきた実績を糧に、今後は地球環境をテーマとした総合的な安全提案型企業をめざしている。
2004.06.10掲載

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