天草ヒノキプロジェクト
野上辰雄社長(野上建設)
原田博之社長(原田製材所)
松本幸裕社長(松本建設)
原田るみ子社長(おてんと丸)
子どもたちが愛着・誇りを持てる「天草」目指し
天草の人工林の約7割を占めるヒノキを地域に活かそうと、2017年に「天草ヒノキプロジェクト」が立ち上がった。メンバーは、設計、建築、製材など業種の垣根を超え、天草ヒノキ≠はじめとした地域資源や、建築などの木にまつわる産業を未来に繋いでいこうと奮闘している。
活動から5年目を迎えた昨年11月、地域の木材を使って地域の工務店が建てる「地産地建」を推進しようと、モデルハウス発電天草ヒノキ小屋≠完成させた。プロジェクトメンバーで開発に携わった野上辰雄社長(野上建設)、原田博之社長(原田製材所)、松本幸裕社長(松本建設)、原田るみ子社長(おてんと丸)―の4氏に、これまでの活動と今後の展望を聞いた。
――設立のきっかけとこれまでの活動は
原田(る) 天草地域は海や海産物のイメージが強く、豊かな森林資源については地元住民にさえ知られていなかった。そんな中、戦後に造林された木々の多くが主伐期を迎え、利活用について本格的に検討し始めたのがきっかけだ。5年目を迎え、設計、建築、製材、雑貨など様々な業種が集っている。
野上 「森と人と未来を結ぶ、天草の木づかい」をテーマに、地産地消を推進するための商品開発や流通の開拓、木へ親しみを持ってもらうためのワークショップや体験会など幅広く活動してきた。19年にはドキュメンタリームービーを制作し、SNS等での発信にも注力している。
――天草ヒノキがもたらす効果は
原田(博) ヒノキは伐採後から徐々に重量と強度が高まっていき、そのピークは約200年後に及ぶ。また油分を多く含むため艶があり、きめ細かい木目と相まって肌触りが良いのも特長だ。地元で育ったヒノキは、天草特有の風土に合致する。顧客の安心感にも繋がるだろう。
松本 建築分野では、ヒノキが持つ強度や水への耐性等を踏まえ、土台や内装材に利用されることが多い。床、壁、天井に天草ヒノキを活用した住まいでは、年間を通して結露や乾燥がなく、非常に快適に過ごせるとの評価を頂いている。
――「発電天草ヒノキ小屋」について
原田(る) 建築確認申請が不要な最小限の居室とデッキ空間に、太陽光パネルを用いた独立給電システムを備えており、日常利用から災害時の備えとしても活用できる最小建築。地元の工務店が地元の木材を使って在来工法で建てるため、使う人の用途に合わせた増改築など、柔軟に対応できるのも大きな強みだ。
野上 趣味のスペース、子ども部屋、店舗、オフィスなど幅広い活用が期待できるほか、災害時には電気が使える避難場所となる。この製品をきっかけに、地域資源や地元の産業に興味を持ってもらい、「地産地建」が徐々にでも広がっていけば嬉しい。
――プロジェクトが目指すものは
原田(る) 今まで天草ヒノキが知られていなかっただけで、いざ触れてもらうと非常に反応が良い。地道に発信を続けていくことが大切だと感じている。もっと多くの方に天草の地域資源や木にまつわる産業の魅力を伝え、子どもたちが愛着や誇りを持てるような天草を目指していきたい。
野上 商品の認知度やブランド力だけを高めていっても、根本から支える担い手がいなければ未来に繋がっていかない。地域産業を支える人材は常に不足している状況だ。消費者へ向けた活動だけでなく行政との連携も強化し、官民一体となって持続可能な地域づくりを推進していく。 |