津奈木町振興課 下川秀美主幹
安い家賃で最高の建物を提供
国土交通省の「第24回住生活月間」で、住宅局長表彰を受賞した津奈木町の公営住宅さくら団地。施設には、夥(おびただ)しい地場産材を活用するなど地域性にこだわった。「減少する町の人口をくい止めたい」。住宅行政に長年携わる振興課の下川秀美主幹は語気を強める。
〈さくら団地は、町の定住促進を図るため役場北側隣接地約3fを開発。平成19年度に61区画の宅地分譲を開始した。その一角(約4区画分)が公営住宅の用地。外観、景観を含め、住宅街の先導的な役割を担う施設として整備している〉
分譲地は、津奈木川堤防の千本桜を見渡し、町のグラウンドや体育館も近いんです。何より九州新幹線の開業を睨んだ開発で、新水俣駅まで車で5分の地の利もありますし。ただ入居がイマイチで頭を悩ませています。公営住宅はそんなまちづくりを担う建物として、日本風の木造、生け垣のイメージを求めていました。
〈W造2階建5棟10戸の建物に地場産材は、構造躯体で100%、内装材等に80l、畳表に100%と最大限活用。外壁にはサイディング材を使用したほか、敷地内通路の柵にギ木を使い、景観への配慮やコスト縮減、工期短縮に努めたことが高い評価につながった〉
元々、津奈木町は、木材にゆかりが深いところ。製材所、プレカット工場、貯木場などがあり、地元産業の中核を担っています。地場産材の活用は、そんな町の事情を反映したものかもしれません。材料は全て品質保証をクリアしたもので、安い家賃で最高の建物を提供できたと自負しています。
〈町はこれまで住宅行政へ積極的に取り組んでおり、昭和の終わりから、現在まで計画的な住宅供給を行っている。もちろん人口流出に歯止めをかけるためだ。受賞はこうした実績が形となって表れた格好。今年度内には町所有の公営住宅109戸を対象に長寿命化計画を策定することも決まっている〉
人口はトータルでは減っている状態ですが、現状を維持することが必要でしょう。長寿命化計画は、既存住宅の建替などの検討も視野に入れています。長期的な観点から住環境の改善に努め「津奈木町に住んで良かった」と思ってもらうことが、住宅行政に携わる者にとって何よりのご褒美かもしれません。
【メモ】
「住生活月間」 10月の1カ月間。功労者表彰はその一環で、住意識の向上、ゆとりある住生活の実現、建築物の質の向上を図るため、国土交通省(大臣・住宅局長)が活躍した個人・団体を表彰する。平成元年から、今年で24回目。今年の功労者は大臣表彰16件、住宅局長表彰7件。 |