(社)熊本県建築士会水俣芦北支部 青年部長 高木太さん
自分のやり方譲らない職人に
水俣市のエコハウスで、この施設の設計者でもある古川保氏(すまい塾古川設計室拒纒\)を講師に招き、伝統的構法をレクチャーしてもらおうという「フルコヤ〜古川流寺子屋〜in水俣」が今年3月に開講した。参加する寥F本県建築士会水俣芦北支部の木太青年部長は建築士で、自ら施工にも携わる建築大工としても活躍中だ。
〈水俣市環境共生型住宅の普及・推進活動が開講のきっかけ。最終的には、その担い手となる若手設計士の育成を狙っている。水俣市に在住する45歳以下の建築士や建築従事者を対象に計10回程講義する。参加は無料。定員は15人だったが、水俣芦北支部の青年部から意欲のある7人が集まった〉
古川先生の最終的な目標は、水俣エコハウスの基本的なことを水俣の設計士でやってもらえればそれで良いというスタンスなんです。例えば伝統的構法では基礎がない状態なんですが、在来のやり方で基礎があっても良い。全てを押しつけることはしない。後は自分たちで考えてやって下さいという。でも、とにかく内容が濃いんです。
〈木さんは最初から建築大工だったわけではない。高校卒業後、大阪に就職し型枠大工の道に進んだ後、家業だった木建設で働いた。大手の下請けで鉄筋コンクリートの仕事があったため型枠大工を続けていたが、ある時に木造建築の仕事へ。二級建築士も取得し建築大工の面白さに出会ったという〉
木建設では元々建築のイロハを知っている職人さんがいて、色々なことを教えてもらいました。ただ自分が影響を受けたのはエコハウスの棟梁でもあった田口幸男さん(水俣市在住、一級建築士)。この人は凄い。エコハウスの仕事では切り込みからやらせて頂き、貴重な体験ができました。
〈エコハウスが示す伝統的構法の良さを身にしみて感じているものの、やはり心配なのはそれを造ることができる職人の存在。フルコヤ塾≠ノ通うことで、画餅に帰すことがないよう水俣らしさ、自分らしさのある家造りを探し求めている〉
大工さんはそれぞれ個性があって自分のやり方をそれぞれ持っています。それはいろんな人から学び、盗んだもので、自分もそんな職人になるでしょう。自分で造る家は「使い勝手」「動線」を優先させると思います。設計・施工するとなると自分のやり方は譲らない。大切なところは自分でやる。それが職人の矜持かと。
【メモ】
伝統的構法 本格的な「木組みの家」が特徴。木と木を接合するのに金物に頼らず「仕口」「継手」と言われる技法で組み合わせる。部材どうしが「複雑に組み合わさり、支え合う」ことで建物の強度を生み出す技法で、大工の木のクセを見抜く眼と熟練した腕が必要。柱や梁が見えるようにして柱の間に土壁や板壁をつくる「真壁(しんかべ)」づくりが基本となっている。 |