上益城建設高等職業訓練校 木村知嘉さん 自分の家を建てるのが将来の夢
「大工さんになりたい」との想いで上益城建設高等職業訓練校の門を叩いたのが1年前。同校での女性の受け入れは初めてのことで、伝統建築を担う人材を育成する場としては、うれしい出来事であるものの、前例がなく期待と不安が交錯する。木村知嘉さんは、そんな状況の中で奮闘中だ。
小さい頃、女性の大工さんをモデルにしたNHKのテレビドラマがきっかけで、自分もやりたいと思った。大工さんは男の世界だが、あまり抵抗はなかった。両親も好きなことならと賛成してくれたし。進路指導でも先生に大工さんになりたいと相談して入所先を決めた。
〈同校を取り仕切る赤松章校長(赤松建設代表・山都町)は、伝統建築をこよなく愛する職人気質(かたぎ)の技能者だ。プレカットやサイディング、張り物製品だらけの現在の住宅を嘆き、そんな材料を使う大工の存在に警鐘を鳴らす〉
授業では道具の使い方、手入れの仕方や技術指導を基礎からたたき込む。規矩術を伝授するのも我々の役目。伝統建築は時間と経験がものを言う。3年間の育成期間でそうした技能士を数多く世に送り出した。彼女はやる気があり、内に秘めたものを持っている。良い大工になれる。
〈知嘉さんが現在勤めているのは、山都町の森工務店。1年間で10カ所程の現場を経験し、下積みとしての仕事をこなしている。切り込みのため作業場での業務も多く、その合間をぬって週2回、訓練校に通い技能を磨いている〉
重たいものを運んだり、つらいことがたくさんある。現場や作業場では、簡単なことしかさせてもらえないし、掃除ばかりの時もある。でも訓練校に通いながら、技能士や建築士の資格を取って、いつか自分の家を建てるのが将来の夢。今はまだイメージがわかないが、普通の家を造りたい。
〈言うまでもなく知嘉さんが造る普通の家とは、今主流となっているプレカットされた木材で短期間にできる家ではない。伝統に裏打ちされた伝統木構法の家だ。下積みをしながら将来、自分の家を夢見る乙女は、いつか自分が家造りを指揮する棟梁≠ニ呼ばれることに誇りを持つだろう〉
【メモ】
上益城建設高等職業訓練校 県内に11校ある熊本県認定職業能力開発校の一つ。昭和27年に発足した上益城技能者組合連合会・訓練所が前身。当初は、左官、石工の技能者も養成していたが、昭和40年代から大工のみの養成機関となる。卒業生は平成21年度末現在で、464人に上るという。 |