(株)水野建設コンサルタント 西本英明 主任
GPS測量でコスト縮減、作業効率化
今年6月、横浜市で開かれた「第34回海洋開発シンポジウム」において、叶野建設コンサルタントの西本英明さんと平川麻里子さんが主宰するプロジェクトチームがプレゼンテーションを行った。全国の海洋技術者の視線が注がれる会場で、GPSを活用したユニークな論文を発表し、存在感を示した。
〈論文の題名は「干潟の地形測量における実測横断測量とGPS測量による観測結果の比較検討」。実測測量がいわば直接法であるのに対し、GPS測量は間接法。両者を比較することで間接法の精度と課題を探った〉
干潟の測量は2005年から熊本大学からの受託業務で行っている。干潟の環境機能を解き明かす基礎資料として地形測量に携わってきたが、干満の影響や泥質の現場は実測を困難にしている。GPSを用いた先端技術の活用により、コスト縮減と作業の効率化を狙った。精度も 3a内の誤差しかなく、浮遊土の影響で常時変化することを考えれば納得いく結果につながったと思う。
〈既に一昨年、寥F本県測量設計・建設コンサルタンツ協会が主催する業務報告会でRTK―GPSを用いた電子平板測量の論文を発表している。10数篇の中から優秀賞を受賞するなど、西本さんの視点は業界でも高い評価を受けていた〉
今回のシンポジウム参加は協会の技術顧問である熊本大学の滝川清教授のバックアップを頂いたおかげ。GPSの活用はマルチ分野で、色んな技術に応用できる。RTK―GPSもそんな新技術の一つ。測量士・測量士補の試験にも出るし、作業規定もある。ただ、精度を保つためには衛星の飛来状況を把握し、入念な観測計画を立てることが大事。現地調査など経験も物を言う。今後、地上・航空レーザーを用いた技術との比較検討も必要だ。
〈プロジェクトではアシスタントとして調査業務を支えた平川さん。入社3年目で、学生時代はコンクリートを専攻課程として研究した。測量士・技術士補の立場で実務をこなしながらも仕事に対する姿勢は貪欲だ〉
この仕事に携わって干潟のこと、植物のこと、生物のこと―など学ばなければならないことがたくさんある。役所、大学、企業の海洋技術者が一同に会したシンポジウムはとても勉強になった。皆さん研究者という堅いイメージはなく、活発に意見を出し合い、場を楽しむ雰囲気が伝わった。
【メモ】
RTK―GPS測量 基準の観測点(固定点)と求点の観測点(移動点)に設置したGPS測量機で同時にGPS衛星からの信号を受信。固定点で取得した信号を、無線装置等を用いて移動点に転送し、移動点側において即時に基線解析を行うことで位置を決定する測量手法。 |