(株)ミサト技建 吉開美秋 社長
土木資産の保全が我々の役割
インフラストックの維持・管理の需要が高まる中、その技術者の養成は欠かせない。土木鋼構造診断士を養成する專本構造協会は、このほど平成20年度の合格者を公表した。毎年、合格率(対受験者)が10%〜20%台と難関な資格に、熊本から名乗りを上げたのが吉開社長だ。
〈土木鋼構造診断士は、今年で資格創設4年目。全国で19年度末現在、242人が資格登録している。ただ、九州では僅か8人。熊本ではたったの1人だけ。専門技術者が不足する今、土木構造物の維持・管理に暗雲が垂れこめる〉
この資格は、鋼構造物の診断技術はもとより、適切な工法を提案することが重要な任務。より専門的な知識を有するため、高度な知識を持つ技術士でさえ、垂涎(すいぜん)の的となっている。自治体の中には、入札参加資格に組み入れたり、橋梁の点検要領に記載しているところもあり、今後、注目される資格となるだろう。
〈鋼製の道路橋は、主に都市部に集中している。ビルの谷間を曲線で抜けるためには、コンクリートやPCでは無理で、鋼製にすることでカーブに柔軟に対応できるという。さらに軽量な鋼製は軟弱地盤にも適しており、都市部ばかりでなく、海岸沿いでは数多く存在する〉
鋼橋の劣化の大敵は腐食と錆だが、定期的な塗装などで食い止めている。しかし、金属疲労は見過ごせない状況。2020年頃になるとかなりの量が50年以上を経過し、その影響を受けることが判っている。長寿命化の実現のため、専門的な見知から経年変化に応じた対策工が必要となっており、状態に応じた提案をしていきたい。
〈土木構造物のライフサイクルコストの低減は、永遠の課題。適切なメンテナンスを怠ると、重大な事故を招きかねない。闇雲に対策工を施すと、却って構造物の寿命を縮めることになる。インフラストックを適確に把握できる技術者への要請が高まる〉
診断士に対する県内での認知度はまだまだこれから。現在取得しているコンクリート診断士との相乗効果で、あらゆる土木構造物に対応できるよう専門技術を活かしていくつもりだ。先ずは自分から取り組む姿勢を見せて、後進の育成につなげたい。土木資産を保全するのが我々の役割。結果的に社会貢献できると思っている。
【メモ】
土木鋼構造診断士 道路橋、鉄道橋、港湾構造物、鉄塔、水圧管、ゲート―など鋼構造物の点検・診断・対策立案に関与する能力が認定基準。試験では択一式と経験論文、専門記述式の各問題が出題される。近年、自治体や公益法人などで資格への評価が高まっている。 |