国土交通省熊本河川国道事務所
所長 福井貴規氏
新技術と地域力で施策を展開
国土交通省熊本河川国道事務所長に前本省道路局企画課国際室長の福井貴規氏が就いた。7月28日に閣議決定された新たな国土強靭化基本計画と国土形成計画を念頭に、新技術と地域力を最大限に活かした施策の展開を模索する。「熊本を更に良くするために何をすべきかを見極めて、しっかり行動に移していく」。福井所長が考える事業の取り組み方針などを聞いた。
――着任の抱負と熊本のインフラ整備状況の印象は
九州、熊本への赴任は初めて。知らないことばかりで全てが新鮮。ただ、それを強みにしてニュートラルな視点で地域の現状や課題を捉えたい。
とにかく熊本は事業量が多いのが第一印象。加えて、どれも整備効果がある重要な事業だ。道路、河川整備ともに着実に進めていかなければならないと気を引き締めている。
――新たな国土強靭化基本計画を熊本に落とし込んでいく施策は
降雨外力が強いといった九州の特性などを見据え、着実なインフラ整備に加え、デジタル等新技術の活用や地域防災力の強化を推進して熊本の強靭化を図りたいと考えている。
具体的に新技術活用については、技術革新が進むAI、ドローン、センサー、通信などの分野と連携を図り、その知見を土木の現場に反映する可能性を探る。
地域の防災力強化については、例えば、河川協力団体の存在だ。白川や緑川の流域では多くの地域の方々に活発に活動して頂いている。河川の美化活動や様々なアクティビティ通じた上下流一体となった各団体のネットワークは、地域の防災力を高める上で大きな力になる。今後、関係自治体とともに、コミュニケーションを強化していきたい。
――国土形成計画の取り組みは
新しい国土形成計画では、国土構造の基本構想として「シームレスな拠点連結型国土」が掲げられている。コロナ禍を経た価値観や働き方の変化、激甚化・頻発化する災害、リスクが高まる世界情勢など、大きな転換期にある今の日本が抱える様々な課題を踏まえた将来ビジョンが示されたものと認識。その中でも特に交通の連結性強化は重要な要素であり、県内の高規格幹線道路ネットワークのミッシングリンク解消、ダブルネットワーク化に向けて着実に整備を推進していく。ただ繋ぐだけでなく、災害に強い道路ネットワークを形成すために直轄国道としてどうあるべきか問題意識を持って取り組んでいきたい。
――思い出深い公務は
高崎河川国道事務所長として務めていた令和元年の東日本台風災害だ。吾妻川の異常出水による橋の流失で地域の交通が遮断されたが、この時、日常生活に支障をきたしている状況を一日でも早く解決しようと、事務所の職員が道路・河川部署関係なく一丸となって知恵を出し合い短期間での応急復旧を成し遂げた。この災害対応は、事務所の組織力が向上し、一つの目標に向かって取り組む職員達のポテンシャルを感じた。
――建設業界へのメッセージを
業界が持続可能でなければ、みちづくり、かわづくりを通した活力ある安全安心な国土づくりや、災害時の対応はできない。大切なパートナーとして、手を取り合っていきたい。
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【略歴】福井貴規(ふくい・たかのり)。早稲田大学大学院理工学研究科(修士)建設工学(土木)専攻修了後、2000年に建設省入省。外務省在中華人民共和国日本大使館一等書記官、関東地方整備局高崎河川国道事務所長などを経て、22年6月から道路局企画課国際室長を務めた。千葉県出身。1975(昭和50)年生まれ。 |