国土交通省立野ダム工事事務所
所長 長岡一成氏
受発注者一丸で完成目指す
打設開始から2年7カ月。今年の5月21日にダム本体のコンクリート打設が完了した。今後は11月1日からの試験湛水を経て、今年度末の完成を目指す。4月に就任した長岡一成所長は「早期建設を望む声に応えるため、発注者、受注者が一丸となって無事故で完成させなければならない」と気を引き締める。
――思い出に残っている仕事は
入省後、2カ所目の勤務地が熊本工事事務所(現熊本河川国道事務所)で、白川の改修や災害復旧に従事した。下流が軟弱地盤のため、時間をかけて堤防を高くする緩速施工や小島地区の沈下防止として、堤内側の堤防法尻に矢板を40bほど打設する試験堤防に取り組んだことが印象に残っている。この経験が技術者としての基礎を築いたと思う。
――11月1日から実施する試験湛水の内容は
ダム管理に移行する前にサーチャージ水位以下の範囲内で貯水位を上昇、下降させ、ダムや基礎地盤、貯水池周辺地山の安全性を確認する。実運用に近い水位下降速度とすることで、安全性を確実に確認し、加えて自然環境への影響を極力低減させるため、試験湛水期間をできる限り短くしたいと考えている。
――直轄事業初の洪水調節専用(流水型)ダムとなりますが
都道府県が整備したダムを含め、完成すれば最大規模の流水型となる。常時水を貯めないことから、管理用道路を利用してダムの見学や柱状節理等の観察ができる。流水型の特長を活かし、阿蘇くじゅう国立公園や阿蘇ジオパーク計画などと連携を図り、地域振興に貢献していきたい。
――立野ダムを活用した施策が既に展開されています
南阿蘇村と連携協定を結び、ワインの貯蔵試験を今年の1月から行っている。ダムの岩盤補強工事などのために造られたリムトンネル内に南阿蘇産の赤ワイン60本を1年以上保管し、熟成効果を検証する。
このほかダム周辺や立野峡谷の安全性、親水性等を向上させ、「かわ」を活かした良好な空間形成と魅力あるまちづくりを目指し、今年2月に協議会を設立した。2024年度のかわまちづくり支援制度の登録に向け、実践組織となる検討部会を通じて、利活用と維持管理の具体的な企画検討・試行(社会実験)などの取り組みを進めていく。
――地域建設業者へのメッセージを
熊本地震や令和2年7月豪雨に代表されるように、発災当初から現場の第一線で地域の安心・安全のため、復旧・復興にご尽力頂いており、感謝の念に堪えない。建設業界は重要なパートナーであり、若者が希望を持って働ける産業となるよう、一緒になって課題解決に取り組んでいきたい。
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【略歴】長岡一成(ながおか・かずなり)。武雄工事事務所、菊池川河川事務所、川辺川ダム砂防事務所、八代河川国道事務所、九州地方整備局河川部などを経て、4月から現職。長崎県長与町出身、1965(昭和40)年生まれ。 |