国土交通省熊本港湾・空港整備事務所
所長 宮本由郎氏
地域建設業者は「港のドクター」


 特化した技術の専門性が求められている海洋土木工事。4月、国土交通省熊本港湾・空港整備事務所の所長に就任した宮本由郎氏は、長年技術者として現場に携わってきた経験から、地域建設業者を「港のドクター」と表現し、各社が持つ得意分野で活かすことを心がける。



――熊本の印象は
昭和から平成、令和へと年号が変わる時、熊本に勤務し今回が3回目となる。平成元年は川尻に熊本港工事事務所ができて、熊本港の防波堤(南)工事がスタートした年。地盤改良を必要としない軟着堤(軟弱地盤着底式防波堤)を全国で初めて設置する時だった。700dほどの堤体を柔らかい粘土層の地盤に載せても沈まず、技術者ながら感動したことを今でもよく覚えている。
 当時は無かった新幹線が通り、熊本駅と熊本空港ターミナルが新しく綺麗になるなど急に都会感を増したような印象だ。ただ交通渋滞は厳しくなった気がする。TSMCの工場建設も進んでおり、道路や空港、鉄道とともに、所管する港をしっかりと整備し、ミッシングリンクの解消、定時性・速達性の確保に繋げたい。

――所管事業の現況を
熊本港については、防波堤(南)の延伸工事があと少しとなり、新たに今年度から耐震強化岸壁(水深7・5b、延長130b)の整備に取り組む。設計等を進め、予算等の兼ね合いもあるが来年度には着工したいと思っている。耐震岸壁への期待は大きく、ポートセールスにも力を入れる。
 八代港では、浚渫土砂の受入先となる大築島南土砂処分場の護岸を整備している。大型船舶は、喫水調整して入港する場合もあるので、航路(水深14b)を早期に浚渫したい。今年3月には、20〜30年先を見据えた中長期ビジョンを策定した。港湾エリアの再編や物流の高度化、カーボンニュートラルへの対応など、港湾管理者と協働しながら対応していきたい。
 熊本空港は、25年度完了に向け雨水の排水機能強化に向けた排水口の改良工事を進めている。本渡瀬戸航路は、引き続き航路保全と護岸改良を実施する。有明海・八代海海洋環境事業は、調査観測兼清掃船の「海煌」と新造した「海輝」を使用し、水質・底質調査や漂流ごみ回収、災害時支援などに取り組む。

――地域建設業者へのメッセージをお願いします
当然なくてはならない存在で重要なパートナーだが、加えて私は「港のドクター」だと認識している。外科や内科、歯科などそれぞれの分野の医者がいるように、例えば潜水作業など豊富な専門知識と専門技術を持つ人と会社が存在して初めて、海洋土木工事が成り立つ。各社が持つ得意分野をそれぞれの場で活かすことが重要だ。
 そのためにも、業界の方と意見を交わし、企業として存続し適正な利益が得られるような仕組みづくりに努めていく。働き方改革や担い手の確保・育成などの試行などにも積極的に取り組んでおり、業界のイメージアップに繋げたい。
 もう一つ、「安全第一」での作業をお願いしたい。港湾工事は、海中での作業や船舶を使った作業など、どういう危険が潜んでいるのかわかりにくい。どんなにいい仕事をしても事故を起こしたら元も子もない。慣れは禁物。安全への意識を常に高く持ち続けてほしい。
◇◇◇
【略歴】宮本由郎(みやもと・よしろう)。1986(昭和61)年、国立徳山工業高等専門学校土木建築工学科卒業後、旧運輸省に入省。九州地方整備局唐津港湾事務所工務課長、鹿児島港湾・空港整備事務所工務課長、熊本港湾・空港整備事務所第一工務課長、鹿児島港湾・空港整備事務所副所長(同付西之表港湾事務所副所長併任)などを経て、4月から現職。山口県出身。1965(昭和40)年生まれ。
2023.6.30掲載

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