国土交通省八代復興事務所
所長 伊藤浩和氏
忙しい時ほど丁寧に対応
令和2年7月豪雨災害からまもなく3年を迎える。被災した球磨川と球磨川に並走する道路約100`、流失10橋の復旧にあたる国土交通省八代復興事務所の2代目所長に、伊藤浩和氏が就任した。5月27日に挙行された球磨川支川の権限代行工事完成式で伊藤所長は、「まだまだ球磨川の復旧工事は続いている。一日も早い復旧・復興に向け、地域に寄り添いながら、職員一丸となって取り組んでいく」と声を上げた。
――着任にあたっての抱負を
事務所が設置されて3年目になるが、この2年間で先輩職員の尽力により、本復旧に向けた方針、方向性が示された。今後は、一日も早い復旧・復興を目指し、更なる加速化に向け、広い視野を持って様々な知恵と工夫を凝らして取り組んでいく必要があると考える。引き続き、関係自治体、設計・施工業者など関係者一体となって、各事業の推進に努めていく。
――熊本県での勤務は
出身は宮崎県だが、学生時代を八代市で過ごした。入省後、2カ所目の勤務地が八代工事事務所(現八代河川国道事務所)で、南九州西回り自動車道の調査・設計を担当した。八代勤務は約30年ぶりだが、当時担当していた道路が完成し利活用されているのを見ると、事業に関わった者として感慨深いものがある。
仕事では、忙しい時ほど丁寧に対応することを心がけている。忙しいと目の前のことに一杯一杯となり、視野も狭くなる。難しいが、忙しい時こそ心を落ち着かせ、丁寧に仕事を進めていければと考えている。
――復旧・復興の進捗は
球磨川の権限代行9支川は、令和2年9月末までに緊急的な対策を完了、本年5月27日に護岸等被災施設(全140カ所)の本復旧が完了し、管理者である県に引き渡した。本川は、八代市鎌瀬地区や人吉市大柿地区など、昨年の台風14号等による出水で堆積した土砂を含め、累計約211万立方bの掘削を実施している。
国道219号等は現在、両岸道路の河川側の擁壁や山側の法面被災箇所で、片側通行規制を行いながら施工している。
流失した橋梁は、令和4年12月に5橋(坂本橋、鎌瀬橋、大瀬橋、松本橋、沖鶴橋)の下部工工事に着手。令和5年2月には西瀬橋の新設架替が完了し、10橋で最初の完成を迎えることができた。
――今後の進め方は
球磨川本川の河道掘削や道路復旧等は、復興まちづくりや緊急治水対策プロジェクトを踏まえた計画として進める。
河川事業は、9支川が完了し、引き続き本川中流部(遙拝堰〜小川合流点)で河道掘削を行うとともに、今年度新たに宅地嵩上げに着手する。
道路は、球磨川沿いの両岸道路約100`(国道219号、人吉水俣線等)の復旧工事を引き続き推進する。橋梁関係では、残る4橋(深水橋、神瀬橋、相良橋、天狗橋)について、準備が整い次第、着工していきたい。
台風14号で被災した球磨大橋についても、調査・設計を進め、橋梁形式を検討していく。
――建設業者・コンサル業者へのメッセージを
発災後、緊急対策や道路啓開に携わった建設業界の皆様には、言葉では言い表せないほど感謝の気持ちで一杯だ。本復旧も、厳しい現場条件の中で、安全を確保しながら工事されていることに対し、改めて感謝したい。引き続き復興事業を確実に進めていくため、建設業協会、測量設計コンサルタンツ協会などと積極的に意見交換し、適切な発注内容や発注時期を検討していきたい。
【略歴】伊藤浩和(いとう・ひろかず)。八代工業高等専門学校土木建築工学科卒業後、1989(平成元)年に九州地方建設局入省。国土技術政策総合研究所道路構造物研究部構造・基礎研究室主任研究官、九州地方整備局災害対策マネジメント室長、同局道路部道路計画第二課長などを歴任、4月から現職。宮崎県出身。55歳。 |