国土交通省熊本河川国道事務所所長
三保木 悦幸氏
地域に寄り添い事業推進

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 国土交通省熊本河川国道事務所の三保木悦幸所長は就任インタビューで「インフラの本来の目的は、整備や管理ではなく、安全安心で豊かな暮らしを実現することだ」と第一声を発した。県内における道路網の課題を「横軸の脆弱さと深刻な都市圏渋滞」の2点と見定め、頻発・激甚化する河川災害に対しては、気候変動を考慮した治水計画や流域治水の必要性を強調。「地域に寄り添いながら、地域のためになる道路・河川事業をしっかり進めていきたい」と抱負を語った。



――前職の宮城県大崎市副市長では、自治体の立場から改めて認識された国土交通行政の役割等があったかと思います
 約3年間、市民に最も近い基礎自治体で働き、市民目線での総合行政の大切さと大規模災害時の国の役割の大きさを痛感した。
 特に令和元年台風19号の災害対応は印象深い。直轄河川の吉田川が破堤し、全国で最長となる12日間の冠水が続く中、国土交通省の排水ポンプ車が全国から最大30台集結して昼夜問わずの排水作業が行われた。
 災害が大規模になればその分、基礎自治体や都道府県単独での対応が困難なことから、国の支援や関与は必須となる。このため、国の組織体制や資機材の強化・充実の重要性を再認識した。

――熊本県内における道路事業の課題や進め方は
 熊本は九州の地理的中心としての優位性を十分に発揮できていないと考える。縦貫自動車道など縦軸は整ってきたが、横軸や放射状のネットワークが少ない。現在事業中の区間は一日も早く完成させ、全く手が付けられていないミッシングリンク(未事業化)の区間は早期事業化を図り、しっかりネットワークを繋げていきたい。
 都市圏の渋滞については全国トップレベルと深刻だ。熊本の交通の特性は中心部に出発点や到着点を有する交通が多いこと。中心部の交通をいかに効率的に拾い上げて都市圏の外や縦軸・横軸に繋げる視点を考える必要がある。そのような意味では、定時制・速達性を兼ね備えた新たな都市圏ネットワークも非常に重要となる。

――河川の防災・減災は、昨今の水害の頻発化・激甚化に対し、特に対策が急務となっています
 長期的視点としては、気候変動等の影響を考慮し、従来よりも1ランク上の白川・緑川の治水計画を考えていく必要がある。と同時に、今ある整備計画に基づき、例えば、白川は下流3堰の改築や緑の区間の整備のあり方検討などの治水計画、緑川は堤防整備や河道掘削などの治水計画を、高潮対策も含めて着実かつ早期に進める。
 さらに、河川管理者だけの対策では不十分な世の中がきている。「流域治水」という考えのもと、あらゆる関係者があらゆる場所で行う取り組みが必要だ。近年は、百年に一回といった計画雨量を上回る洪水が頻発し、激甚な災害が日本各地で多発している。今後、千年に一回の規模のような、かつて経験したことがない雨がいつ来ないとも限らない。各関係者には主体的参画をお願いしたい。

――地元建設業界へのメッセージを
 まず、熊本地震や令和2年7月豪雨では、前面に立って復旧・復興に取り組んだ地元業界に感謝を申し上げる。災害大国日本において培われてきた質の高いインフラ整備・維持管理とその技術力は日本の誇り。技術力は、政府あげて取り組んでいるインフラ輸出の根幹でもあり、技術力の研鑽を引き続き期待している。
 昨今、自然災害がますます頻発化・激甚化する中で、地域に一定規模の建設関連産業の存在が不可欠と強く認識しており、今後、被害状況の調査、測量・設計、仮復旧・本復旧のみならず、瓦礫や災害ごみの収集・処理など、ありとあらゆることが業界に求められるだろう。国、県、自治体と両輪となって地域の安全・安心を守る役割を担ってほしい。

  ◇  ◇  ◇
【略歴】三保木悦幸(みほき・よしゆき)。神戸大学大学院自然科学研究科建設学専攻博士課程前期課程修了後、1997(平成9)年に建設省入省。外務省在エチオピア日本国大使館二等書記官、九州地方整備局道路計画第一課長、国土交通省総合政策局政策課政策調査専門官、フィリピン共和国派遣(JICA専門家)などを経て、2018(平成30)年7月から宮城県大崎市副市長を務めた。高知県出身。1972(昭和47)年生まれ。
2021.6.17掲載

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