熊本県土木部長に就任
上野 晋也氏
熊本の発展と地方創生を
「50年後、100年度を見据え事業推進」

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 熊本県土木部長に4月就任した上野晋也氏は、西日本建設新聞社のインタビューに応じ、「50年後、100年後を見据えた熊本の発展と地方創生」の実現に強い意欲を示した。熊本地震から4年が経過。益城町などの創造的復興に加え、県内各地で展開されている幹線道路整備を加速させ、新たに経済や人の流れを生み出すことで県経済の活性化に繋げる狙いで、「建設産業はその中心的役割だ」と期待を寄せる。新たに展開する「新3K推進プロジェクト」の概要も明らかにした。新型コロナウイルスへの対応については、建設業への影響の最小化に努めていると説明し、事業執行の遅れなどの懸念に対しては、「当面は十分な予算がある。切れ目なく発注していく」と明言した。



―就任にあたっての抱負を

 熊本地震からの創造的復興、国土強靱化、更なる熊本の将来の発展に繋げる取り組みに力を入れる。
また、将来にわたる県土の形成にとても重要な広域道路交通計画を策定する。県内各地で展開されている幹線道路整備を加速させ、新たに経済や人の流れを生み出すことで県経済の活性化にも繋げていきたい。
 今年度から地方創生第2期がスタートする。人口減少が加速化する中で、県全体の発展に向け、これまで以上に市町村と連携を強化していきたい。
 就任のスローガンは「スピードと実行の土木部」。スピード感を持ち土木行政を推進する。

―益城町では県が事業主体となった土地区画整理と熊本高森線4車線化が本格化してきました
 「益城町の復興なくして熊本地震からの復興はない」という思いのもと、県と町が一体となって取り組んでいる。
益城中央被災市街地復興土地区画整理事業は、過去に例がない早さで進めていて、事業開始から1年半で全体の約5割の仮換地指定を終えた。造成工事に先行着手した街区では、早ければ6月から自宅再建の着手が可能となる見通しである。
4車線化に関しては、契約者ベースで約76%の用地を取得した。工事は約1`区間に着手、うち歩道部分の延べ413bが完成し、復旧後の姿が現地で目に見える形になってきた。
被災者の生活再建に向けて時間的緊迫性を持って事業に取り組むとともに、将来に向け更なる賑わいが生み出されるように町と連携して進めていきたい。

―県では20年度から「建設産業新3K推進プロジェクト」に取り組まれます
 14年度から建設産業総合支援事業として建設産業のイメージアップや資格取得支援、建設業界と教育機関が連携した様々な取り組みを実施してきた。
 20年度はこれまでの事業を拡充し、「建設産業新3K推進プロジェクト」と題し、新たに小学生対象に重機操作技術大会や工事現場見学会、中学生対象の重機・ドローン操作体験などを企画していたが、新型コロナの影響でイベント系の事業は縮小が余儀なくされている。
 どの産業も担い手不足は喫緊の課題なので、いろいろな切り口で建設産業の環境づくりを考えていく。高校生だけでなく小・中学生にも興味を持ってもらう機会を設けていきたい。小さい頃から建設産業への関心、ものづくりの面白さを体験することによって、建設産業への就業に目を向けてもらえれば。働き方改革の推進に取り組む建設業者への補助事業も実施する予定。

―週休2日工事とICT施工の試行は2年目を迎えます
 それぞれ、19年度から取り組んできたが、20年度は対象を拡大させる。
 週休2日については、19年度は設計金額が一定金額以上の土木工事と営繕工事を対象としていたが、20年度は原則すべての土木工事、営繕工事、港湾工事を対象とする。後押しするかたちで、土曜日の現場一斉閉所も計画している。休日が増えれば業務の効率化も必要となるので、受発注者双方の省力化を図るため、書類簡素化や高度情報化を推進して、働き方改革を進めていきたい。
ICT活用工事についても19年度は土工量5000立方b以上としていたが、20年度は原則1000立方b以上に対象を拡大している。

―建設キャリアアップシステムの運用がはじまりました
 建設技能者一人ひとりの技能と経験を経歴というかたちで情報化することは、能力評価や処遇改善にも繋がっていき、現場の効率化や担い手の育成確保にも寄与するものだ。県としてもシステムの活用・普及拡大に努めるとともに、市町村にも働きかけたい。登録業者への評価の実施はまだ決まっていないが、入札参加資格に関する加点等の取り組みを検討したい。
 発注者は国、県、市町村と三者あるが、業界は一つ。国と市町村の橋渡し役を担って、建設業界全体の働き方改革を大きく進めたい。
また、老朽化していく社会インフラをきちんと守っていただく建設業の皆さんには、産業として持続していただかなくてはならない。そういう社会の大きな目標を、業界と共有して取り組む必要がある。

―コロナウイルスの感染拡大で、建設産業にも不安が広がっています
 喫緊の課題は、新型コロナウイルスによる「感染の防止」と「建設業関係への影響の最小化」だ。消毒液の設置や換気の徹底、3密の回避といった感染予防対策について通知したほか、稼働中の工事・業務の一時中止や工期延長、経費の設計変更に柔軟に対応しており、今後も適切に対応していく。接触を避けるため、郵送対応といった建設業関係事務手続の見直しも取り組んでいる。
 また、動向によっては資機材の調達が困難になる可能性もあるため、施工中の土木建築工事を中心に資機材の調達状況を月2回調査している。特段の変化があるとは聞いていないが、今後も動向を注視していきたい。

―県は当初予算が骨格編成、6月補正で肉付け予定でしたが、コロナ対策で9月以降へと先送りされました。発注への影響はありませんか
 20年度に執行される19年度補正予算分と20年度骨格予算分で規模的に当面は十分な予算がある。平準化という観点から、切れ目ない継続的な発注に努めていくことにしている。「予算が少ない、発注量が例年より少ない、発注が遅れている」といった状況にはなっていない。
 公共投資は、景気の下支えや景気を回復する役割もある。業界の皆さんから、コロナの影響を心配する声もいただいているが、影響を最小化してしっかりと進めていくことが我々の使命だ。

―県内建設産業界にメッセージをお願いします
 社会資本整備はもとより地域の安全安心の担い手としてご尽力頂いていることに深く感謝申し上げる。熊本地震から4年が経過した。今年は残された課題を確実に解決し、創造的復興を熊本の更なる発展に繋げるような一年にしなければならない。
 県では、道路のリダンダンシーの確保、河川改修・掘削、土砂災害の防止など県民の安全安心を確保するためにハード・ソフト両面から事業に取り組み、防災・減災・国土強靭化への取り組みを強力に進めていきたい。
 また、県内各地で展開されている幹線道路整備を加速させ、新たに経済や人の流れを生み出すことで県経済の活性化にも繋げていきたい。
 そのためには、中心的役割を担う建設業界のみなさまの御協力が必要不可欠だ。
 50年後、100年後を見据えた熊本の発展と地方創生の実現に向けて、引き続き御支援・御協力をお願いしたい。

(うえの・しんや)
1960年5月17日生まれ、熊本市在住、84年熊本大学工学部土木工学科卒業
略歴=84年熊本県採用、2016年土木部道路都市局道路整備課長、18年土木部道路都市局長、19年上益城振興局長、20年土木部長。
2020.5.21掲載

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