国土交通省熊本復興事務所
大榎 謙 所長
一日も早い復旧復興へ事業推進

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 熊本地震で寸断された阿蘇地域アクセスルートが着実に回復へと向かっている。国土交通省熊本復興事務所が所管する長陽大橋ルートは2017年8月に、俵山トンネルルートは今年9月に全線復旧。残る国道57号阿蘇大橋地区と国道325号阿蘇大橋ルートについては20年度中に開通する見通しだ。最前線で舵を取る大榎謙所長は「関係機関や建設業者の方と一体となって一日も早い復旧復興を強力に推進していく」と力を込める。



―国道57号阿蘇大橋地区の事業進捗状況は
 阿蘇大橋地区は、斜面長約700b、幅約200bと大規模な斜面崩壊が発生した。当初は無人化施工で応急工事を進め、その後有人化により、斜面の恒久的な安定化対策に取り組んでいる。今年6月に斜面上部の対策を終えており、今年度中には斜面全体の工事が完了する。国道57号現道部は、数カ所が決壊し、通行不能となった。現在は、並行するJR豊肥本線の工事と調整しながら大分側欠壊部の斜面対策を進めており、20年度中の開通を目指している。

―国道325号阿蘇大橋ルートについても20年度中の全線開通が予定されています
 崩落前の阿蘇大橋から約600b下流にPC3径間連続ラーメン箱桁橋を主体とする新たな阿蘇大橋を建設している。工事区間は南阿蘇村立野から河陽までの約1`に及び、土工区間(約475b)と橋梁区間については、立野側のアプローチ部(約180b)と渡河部(約345b)で構成。これまでに土工区間の改良、全橋台・橋脚8基のうち7基、アプローチ部の床版工が完成した。10月からは渡河部の上部工の工事を推進している。

―阿蘇大橋を施工するうえで、工夫されている点は
 熊本地震と同程度の大規模災害が発生しても早期復旧が可能な構造を採用した。上・下部工を繋ぐ支承部を先行損傷させることで、全体へのダメージ軽減を図る仕組みだ。また落橋防止対策としては沓座を拡幅するなど全国的に見ても類を見ない試みで、技術的な検討にあたっては、国土技術政策総合研究所の熊本地震復旧対策研究室から助言をいただきながら進めている。
 工期短縮に繋がる工法も採用している。黒川の急斜面における下部工の施工を円滑に進めるため、両岸に巨大エレベーター「インクライン」を設置した。効率的な施工を図るために導入したインクラインは、仮設構台の設置や資材の搬入など、国内最大級の台車として60dもの資機材を一度に運ぶことができる。橋脚施工では、作業用足場と型枠を一体化させ、油圧ジャッキでクライミングする工法を取り入れ、作業の軽減を図った。上部工(橋桁)の張出架設には超大型の移動作業車を使用している。

―今年3月には阿蘇山直轄砂防事業の初弾工事が始まりました
 阿蘇カルデラ内において、土砂災害から住民の生命財産や社会基盤の保全を図る。事業化された砂防堰堤は25基程度で、現在7基(工事件数9件)の工事に着手している。幾度となく災害を経験してきた阿蘇地域の更なる安全度向上に努め、速やかに事業を執行していく。
―これらの事業には多くの県内コンサル・建設業者が携わっています
 余震が続く地震発生直後より多大なご尽力をいただき、深く感謝を申し上げます。今後も一日も早い復旧・復興に向け事業を促進していくので、引き続きご支援とご協力をお願いしたい。

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【略歴】大榎謙(おおえのき・けん)。大分高等専門学校卒業後、1986(昭和61)年に建設省入省。熊本河川国道事務所調査第二課長、九州地方整備局道路部道路管理課長補佐などを経て、2017(平成29)年4月から国土交通省道路局環境安全課道路交通安全対策室課長補佐を務めた。19年4月、熊本復興事務所長に就任。大分県出身、1965(昭和40)年生まれ。
2019.12.16掲載

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