国土交通省立野ダム工事事務所
阿部 成二 所長
観光拠点として復興支援

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 事業計画から約35年、昨年8月に立野ダム本体が着工した。治水対策に加え、観光資源としての役割も担い、南阿蘇村の自然環境とダム建設事業を連動させた観光の具体化やインフラツアーの商品化が進められている。前職の本省水管理・国土保全局河川環境課で培った経験を生かし、「阿蘇の観光拠点として、熊本地震からの復興を後押ししたい」と力を込める。



―本省では、どのような業務を
 国が管理する109水系の維持管理の予算や事業を所掌していた。限りある予算の中で河川堤防や排水機場などの機能維持を図るとともに、維持管理の効率化に努めた。既存施設を賢く使う≠アとで結果的に付加価値を高め、効率的な維持管理が可能となる。
 例えば、ミズベリンクに代表されるように一定の手続きを踏めば、河川区域内での営利活動が可能となる。維持管理に特化した方法として、河川堤防を企業広告スペースとして貸し出し、その対価で維持管理を賄うなどの施策も検討してきた。本格化はこれからだが、将来的には必要となる施策だろう。

―立野ダムを活用した施策が展開されていますが
 阿蘇の観光振興を目的に産学官で連携する「阿蘇・立野峡谷ツーリズム推進協議会」が昨年度に発足した。これまでダムカードと連動したフォトフレームや現場内の展望所「たてのてらす」の設置、ダムカレーに加え、インフラツアーを開発している。立野ダムの機能は治水に特化しているが、使い方によっては多様な機能が期待できる。阿蘇全体の魅力に繋がる付加価値を見出したい。
 また、県内で唯一建設中のダム工事現場として、見学会を積極的に開催している。今年4月から9月末までの半年間には3000人を超える方が訪れた。立野ダムは阿蘇くじゅう国立公園内に建設され、周囲には柱状節理など阿蘇ジオパークとしての魅力もある。ダム完成後は管理用道路等を活用し、より間近で観察できるようにしたい。

―ダム工事の進捗状況は
 地域の安全安心を一日も早く実現するため、チーム立野を合い言葉に取り組んでいる。日々現場は動いており、新たに発生する課題には即座に対応・解決して進めている。土木技術と現場管理技術の粋を集めた現場だ。
 ダム本体の基礎掘削は約4割を終えており、1年後には本体構築に乗り出せるのでないか。施工を進めるにあたり、ダム本体を含めた3次元設計モデルを作成している。設計上の問題点に加え、隣接する他施設との接続や工程上の不具合のチェックなど、関係者間での情報共有が可能になった。
  
―地域建設業者へのメッセージを
 熊本地震からの復旧復興を通して、改めて地元の建設業者やコンサル業者の存在がいかに重要であるかを実感した。ただ、担い手確保など、取り巻く環境は厳しさを増している。働き方改革の推進も含め、発注者として業界の健全な発展に貢献できればと思っている。

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【略歴】阿部成二(あべ・せいじ)。1985(昭和60)年に建設省入省。御船町出身、1966(昭和41)年生まれ。
2019.11.11掲載

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