国土交通省川辺川ダム砂防事務所
竹村雅樹 所長
住民の方から信頼される事務所へ
今年も全国各地で大雨や台風などによる甚大な災害が頻発している。管轄する川辺川流域も急峻な地形が多く、土砂災害が発生する危険性は非常に高い。前職の本省防災課で培った経験などを生かし「地域の安全・安心を守るため全力で取り組み、住民の方から信頼される事務所づくりを目指したい」と力を込める。
―防災課では、どのような業務を
防災教育とTEC―FORCE(緊急災害対策派遣隊)制度の検討などに携わっていた。防災教育は、東日本大震災時の「釜石の奇跡」が契機となっている。震災前から防災教育を徹底していたため、津波が襲来したにも関わらず、小中学校にいた児童・生徒から1人の犠牲者も出なかった。これに着目し、災害時の心構えや逃げ方を啓発するため、小学校に出向いたり人間の心理を学んだ。子供たちには怖い映像を見せれば早く逃げると思っていたが、実際は怖いと見なかったり、すぐに忘れようとする。怖がらせず適切に知識を持ってもらうため「防災カードゲーム」を作成した。
TEC―FORCEに関しては、南海トラフ巨大地震や大規模水害等の発生に備え、確実に体制や機能を拡充・強化していく必要があるため、法的措置の検討などを進めた。活動に欠かせない、コンサルや建設業者との連携方法などについても議論していた。
―目指すべき事務所像を教えてください
地域住民の方から信頼される存在でありたい。与えられた業務だけでなく、防災教育や災害時における職員の派遣、技術的な支援、機材の貸し出しなどを通し「ここに事務所が無いと困る」と言って頂けるよう全力で取り組みたい。五木村の生活再建も、我々に与えられているミッションの一つ。過去の経緯を正しく認識し、可能な限り支援していく。
―砂防事業の取り組みについては
今までに118基の砂防設備が完成しているが、全然足りている話ではない。ハード整備を行う上で地形等の問題もあるが、これまでの歩みを止めることなく、ICT施工の活用や最新の設計・工法などの知見を取り入れながら、計画的かつ効率的に進めていければと思う。
―地元業者へのメッセージを
7月の大雨でも地元の協定業者の方には、お世話になった。土地勘があり、どこを点検すればよいのか理解されている。改めて国交省の仕事は、国交省だけで成り立っているのではないということを認識した。特に山間地の現場では、地域の実情を熟知している企業の力が必要だ。
―人吉・球磨をはじめとする流域の印象は
自然が豊かで、建造物や史跡など歴史や文化も素晴らしい。お店の方も親切で、登下校時の子供たちが元気に挨拶してくれるのには驚いた。休日は趣味である温泉巡りや観光スポットに出かけるなど、日本遺産に登録された「日本でもっとも豊かな隠れ里」での生活を満喫している。
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【略歴】竹村雅樹(たけむら・まさき)。京都大学大学院修了後、2004(平成16)年入省。九州地方整備局筑後川河川事務所調査課企画係、近畿地方整備局企画部企画課長などを経て、17(平成29)年7月から水管理・国土保全局防災課課長補佐を務めた。大阪府出身。1979(昭和54)年生まれ。 |