国土交通省菊池川河川事務所
杉町英明 所長
地域自治体・地域建設業者と連携
2017年に菊池川流域が日本遺産に認定された。4月に就任した杉町英明所長は、文化・歴史的な魅力の発信のほか、自治体の連携による観光振興にも期待を寄せる。国土強靱化については、地域住民の安全確保に向け、3カ年対策後の施策を模索。流域自治体や地域建設業者との課題・認識の共有が重要だと強調する。
―心に残る出来事は
16年4月の熊本地震では、TEC―FORCEとして阿蘇大橋の崩落現場に入り、状況把握と調整に努めた。斜面下では自衛隊や消防、警察等が捜索活動を行っており、二次災害が発生しないよう、ドローンで上部を空撮して、専門的な立場から助言した。余震を知らせるアラームが頻繁に鳴り、また崩れるのではと気がかりだった。建設業者の方は24時間体制で道路の啓開作業をされていた。緊急的な復旧対策には国土交通省の技術力と建設業界との連携が大変重要だと感じた。
―菊池川の印象を
流域が日本遺産に認定されるだけあって、川の恵みが文化や歴史を培ってきた。川を活用した団体などの活動が盛んで、地域の交流が積極的に行われている。観光面でも各市が川で繋がる意識を共有して連携できれば、流域全体の活性化に繋がっていくのではないかと感じている。美味しい米や野菜、果物など地域住民にとっては当たり前なのかもしれないが、ブランド化して全国に発信できるはず。地域の良さに気付くことも大切だろう。
―18年度から国土強靱化3カ年緊急対策が始まりました
河川内の土砂掘削や12年に浸水被害が発生した合志川の堰改築、橋梁架け替えを促進している。全国的に災害の規模が大きくなってきており、ハード対策のスピードを早めないと追いついていかない。
緊急対策という意味で河道掘削は有効だが、上流から土砂が運ばれてくる以上、永遠に掘削を続ける必要がある。特に菊池川中流部は支川が合流する地区なので、一旦溢れると逃げ場を失ってしまう。いかに早く安全な場所に避難できるか。例えば堤防を強化し緊急輸送路として使えるようにするとか。そういった取り組みが出来ないかと考えている。水防災意識社会再構築ビジョンでの取り組みも含め、地域に必要なものは何か、自治体と認識を共有し国土強靱化を進めていきたい。
―地域建設業者へのメッセージを
地元愛に溢れていて地元を大事にされている。住民とのトラブルも聞かないし、何よりも仕事が丁寧だ。
ものづくりを通して地域をもっと良くしていきたいという思いの中で、施工されているのだろう。そういう意味でも国土交通省とは良きパートナーとして、お互いが地域を良くしていくという一つの方向を持って連携していきたい。
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【略歴】杉町英明(すぎまち・ひであき)。福岡大学卒業後、1989(平成元)年に建設省入省。九州地方整備局企画部建設専門官(防災担当)、武雄河川事務所副所長などを経て、2017(平成29)年7月から国土交通省水管理・国土保全局水資源部水資源政策課企画専門官を務めた。佐賀県出身。1966(昭和41)年生まれ。 |