(社)熊本県建設業協会天草支部
支部長 藤本一善 氏
キーワードは雇用≠ニ生産能力
(社)熊本県建設業協会天草支部の平成20年度総会で、会員160社を束ねる新支部長に藤本一善氏(鞄。本組代表取締役)が選ばれた。独自の視点で建設業界の動向を鋭く見つめる藤本氏に問題点、今後の打開策などを聞いてみた。
――業界の現状は
公共工事の激減により、需給バランスが崩壊し、ダンピングが頻発している。また、建設資材の高騰や金融機関の貸し渋りなど業界は二重苦、三重苦にあえいでいる。公共工事が増える可能性がない今、需給バランスを整えるには淘汰という関門を通る必要があるが、淘汰の方法をどのようにしていくのか、業界、発注者ともに突きつけられている。
――需給バランスを整えていく時のキーワードは
「雇用」と「生産能力」だ。建設業は地域の雇用を底辺で支えてきた。可能な限り自然退職に近い人員削減を行うべきだし、倒産による失職が、労働者にとって最も辛い道だ、このことを深く考えるべきである。
次に、現在ほとんどの企業がぎりぎりまでリストラを行い、施工能力を失いつつある。今まで培ってきた能力を失うことは地域の損失だ。この2点を踏まえて、新たに建設産業構造を構築する必要がある。
――具体的な方策は
われわれ企業側はある程度の規模の会社においては合併を進めること、小さい規模の会社では現在より細かく再分化した専門工事に特化し、下請けによる生き残りを図るべきだ。元請け業者と下請け業者がはっきり分かれ、それぞれの役割を果たしていくことが重要だ。
一方、発注者においては格付けや入札制度の改革による淘汰のスピードアップ、合併推進策、重層下請けの容認、などが求められる。
――入札制度の在り方については
協会としては予定価格の上限拘束性の撤廃と事前公表の廃止を求めていく。次に、これは全く個人的な意見だが、参入下限のない一般競争入札の拡大が理想だと考えている。これにより、先ほどの合併と下請けへの特化がより速く進むと考えている。
――天草支部では「熊本・天草幹線道路」の早期完成を訴えていますが
以前、天草5橋の耐震補強工事で、5号橋を片側通行にして床板工事をした時、大規模な交通渋滞が起った。天草支部が独自で調査を行った所、今後残りの橋梁耐震補強工事による交通渋滞の損失額はなんと503億円になることが分った。大矢野バイパス(大矢野〜松島間)の整備に掛る事業費が183億円なので、バイパス整備を優先させるべきだと考える。
熊本市が政令指定都市を目指している中で、地域経済を見たとき、幹線道路の整備が遅れている天草地区は、今後どうしても不利な状況に陥ってしまう。財政に負担が掛らないように、PFIや社会投資ファンドなどを活用した事業の進め方もあるはず。
――天草支部が守るべき理念とは
建設業協会天草支部は、業者としてのエゴを守るためのものとしてあるのではなく、常に地域や住民に資するものでありたいと思っている。その思いを実現するためには、建設産業構造を構築し直し、建設業者がある程度の利益を生み出せるようにしていきたい。 |