上益城高等職業訓練校
  校長  赤松章氏

 「伝統構法≠若い世代に継承したい」



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 近年、伝統構法を用いた木造建築が減少している中、その構法を受け継ぐ若い大工職人が減っている。そのような状況の中で、上益城建設高等職業訓練校(上益城郡御船町)の校長を務める赤松章氏は、伝統ある木造建築の魅力やその技を若い世代に継承していこうと、日々奔走している。赤松校長に、訓練校の特色や指導内容などについて話を聞いた。





――現在までの訓練校の歩みは
 戦後間もない昭和26年4月に、前身となる上益城地区技能者養成所が発足した。同34年3月に県知事認定を受けた後、同44年4月に現在の「上益城建設高等職業訓練校」へと名称を変えた。昭和33年度から平成19年度までに送り出した修了生は合計で458人になる。

――訓練の内容は
 学科は木造建築科の1学科のみ。現在の生徒数は8人で、中には水俣や天草といった遠方から来ている訓練生もいる。訓練期間は3年間で、毎週木曜日の午前9時から午後4時30分まで指導している。
 訓練を修了すれば、国家検定である1、2級技能検定の受験資格年数が短縮され、2級に至っては学科試験が免除となるなどの特典がある。
 
――訓練校の特徴は
 私を含めて、1、2級建築士や1級技能士の資格を持った棟梁2人がマンツーマンで指導を行っており、このような学校は、県内でもほとんどないと思っている。訓練生の数も8人と少ないが、それだけに質の高い教育ができることが最大の特徴だと言える。

――具体的な指導内容は
 伝統的な木造建築の技を伝えるために、基本となるノミや鉋(かんな)、差し金の使い方などをしっかりと体に覚えさせていく。大工職人にとって大切なことは、一本一本の木材と対話して、木の性質を見極めた上でその長所を最大限に引き出し、金物を使わずに地震が多く、高温多湿な日本の風土に適合した構造として、千数百年の歳月を要して培われた技術。これが本当の伝統構法≠セと信じている。このようなこだわりを持った職人を一人でも多く育てていくことを目標としている。
 3年間という訓練期間で学べることは、基本的なことばかりだが、卒業後実際の現場で学び、難しい局面にぶつかっていくことで、一人前の職人になっていく。卒業した後でも分からないことがあれば、いつでも相談してもらいたいと思っている。

――今後の訓練校での取り組みは
 運営委員会で、木造建築物の視察・研修を積極的に行っていきたい。また、訓練生の実習の一環として、近隣の小さな御宮・御堂の建替えや古民家の解体工事などに関わっていき、当時の建築技術を直接肌で感じ学んでもらえたらと考えている。
 これからも当訓練校の認知度をもっと高めていき、より質の高い若い職人を業界に送り出していきたい。

――大工職人を目指す若者に対して一言
 団塊の世代が引退してしまうため、本物の技を持った次の世代の職人を必要とする時代が必ずやって来る。そのためには、ベテランの職人が引退する前の今の時期に、伝統的な技術を学び、どんな現場や職種にも対応できる技を身に付けることが大事。
 建築の基本は木造≠ニいう信念を持って、将来、後世に残る建物を造った時、自分が選んだ道にきっと満足することと思う。
2008.07.17掲載

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