熊本県設備設計事務所協会
 会長  木村 秀崇氏

 「設備専門の技術で事務所登録を」



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 「法の解釈は、設備を含めた設計を建築士が行うということが明確になっただけ」。このほど熊本県設備設計事務所協会の会長に就任した木村秀崇氏(許リ村設備設計事務所代表取締役)は、構造計算書偽装事件発覚後、再発防止策として改正された建築士法について「建築設備士にとってすかを食う結果=vと嘆く。
 建築士法によると、建築設備士は、建築士に対して高度化・複雑化した建築設備の設計・監理に関する適切なアドバイスを行う資格とし、実際には建築設備士の業務独占権限を認めていない。
 改正では、建築設備士に4年の実績をもって一級建築士の受験資格を付与するとしたものの「設備を専門としていた者が、これから建築士を目指すことは至難の業」(木村会長)とし、結局、設備士は法的に守られなかったに等しいという。
 「建築士と同じ権限と責任が持てるようになり、法律的に認められる設計者として社会貢献できると期待していたが…」。木村会長に法改正に伴い業界が抱える問題などを聞いた。




――法改正で設備設計はどのように変わったか
 これまで法の中で、グレーゾーンだった設備設計の位置づけが今回の改正で明文化された。しかしそれは、「設備の専門技術者が行っていた業務を建築士が責任を持って取り組む」ということがはっきり明記されただけ。
 高度な専門能力を有する建築士として「設備設計一級建築士」も新設されたが、この資格も一級建築士の中から確保されるため、設備の専門技術者には、何ら価値が見いだせない資格となっている。
 また改正では、建築設備士に対して、4年の実務経験で一級建築士の受験資格を付与することを認めた。これは、設備設計者として法的な地位を確立するには「まずは一級建築士の資格を取得しなさい」という過酷な高いハードルを与えられたことと同じで、特に設備設計専門で長年仕事をしてきた者にとっては、業務の傍ら一から建築士取得の勉強をすることは到底難しいことだ。結局、我々業界にとっては何も変わらず、かえって厳しくなったと言える。

――改正に伴い業界が抱える問題点は
 近年、建物費用の半分近くは設備費と言って良いほど設備は世の中が必要としている部分だ。設備の専門的な技術に対する知識や理解が不十分で、設備設計の実績も少ない建築士のみが、今になって設備設計の責任者と法律が認めるのはおかしい。
 懸念されるのは、業務に対する責任の所在が建築士と明確になったことから起こる仕事量の減少。特に建築士事務所登録をしていない者、いわゆる設計補助者(設備技術者のみで建築士を有していない企業)では、今後、公共関係の受注が困難になると予想される。
 一部の自治体では、建築士事務所登録をしていない設計補助者へ設計補助業務を委託するために、独自の発注要件を定めているが、同様のシステムを熊本の各自治体でも導入してもらえるよう働きかけねばならないと考えている。

――業界変革時に、協会の舵取りを任せられたが、どのような協会運営をしていきたいか
 中長期的な目標としては、今回の改正で叶わなかった設備専門の技術資格による設備事務所登録制度の実現≠重点に、設備専門の技術者としての誇りと自覚をもって社会貢献していくことを掲げている。
 その団体の長として、目標を見誤らないよう協会を盛り上げなければならない。志を同じにする会員の増強にも努力し、社会からの要請に対しては信頼で応えるとともに、建築設備士の社会的地位の向上も図っていきたい。
2008.06.30掲載

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