第5回「真の日本のすまい」提案競技
文部科学大臣賞を受賞
建築設計・吉岡アトリエ(菊池市泗水町) 吉岡 勇氏
「“家づくりは人づくり”の原点」
住宅産業研修財団主催の第5回「真の日本のすまい」提案競技で、菊池市泗水町亀尾の吉岡勇氏(建築設計・吉岡アトリエ)が文部科学大臣賞に選ばれた。受賞表題は「未分化な空間をもつ家」。日本人がもつ気遣いや思いやり、ケジメなど精神的な豊かさを追求したプランで、審査員からは「唯一、求められた提案性に建築家として正面から向き合っている」として高く評価された。吉岡氏に提案競技の参加のきっかけなどを聞いた。
――提案競技の参加のきっかけは
今、家づくりに何が欠けているかというと、精神的な豊かさ。確かに空間のクオリティは高まっており、利便性や快適性、安全性等も向上した。しかし、最も重要なことは、家族や子ども達がきちっと精神を育めるような家づくりをすること。近年、利便性や快適性はもちろん、表層的なイメージだけが商品として前面に出てくる家のあり方に危機感や不安感さえ覚えている。
私は、家づくりは人づくりの原点≠ニ常日頃考え、ユーザーに対しては、いつも「家は自分が愛着をもてる地域に建てて下さい」とアドバイスする。そうすることで、地域の寄り合いや清掃活動などに積極的に参加するようになり、人づくり、さらには地域づくりにも繋がると信じている。
今回のコンペは、建設地や家族構成など一定の条件下で建築家自身が考える「真の日本のすまい」のあり方を問うており、根本的な建築論がテーマ。物から精神、家から人間へ回帰することを望み、人間や家族のあり方を家づくりを通して訴えたかった。
――提案した未分化な空間をもつ家≠ニは
居間や寝室、子ども部屋など機能的に各部屋を分化するのではなく、重なり合う領域すなわち「間の空間」を生み出すもの。
具体的には、部屋の仕切りを最低限にとどめ、子どもの学習コーナーや父親の書斎、主婦の家事スペースを共有空間として繋いでいる。また、本棚を設け子ども達の読書の場や、ときには家族内で開く発表会の客席などとして使用できる大階段を家の中央に設置。その中心には四方を障子で囲んだ2畳の和室を設け、和室は夜には行灯(あんどん)にも似た光景を醸し出すようになっている。
このように家全体に回遊性を持たせた融通無碍(ゆうずうむげ)な空間は、日本人が本来もっている気遣いや思いやり、ケジメなどが培われ、精神的な豊かさを住むの者に与える。
――地域づくりとは
たとえば現在は計画が凍結している菊池市の新庁舎についていえば、建設する際には、市民自らがどんな風に建てれば本当に愛着のもてる庁舎となるかを考えることが大切。単に「市はどういう風にしてくれるのか」「合併してどう変わったか」と言うだけでは駄目。率先してフォーラムなどを開催するなど、市民による地域づくりを行っていかなければ市は変わらない。
私も魅力的で住みたいと思われる市になるよう地域づくり、家づくり、そして原点となる人づくりを進めていきたい。
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