「周辺住民の生命と健康を守りたい」
九州アスベスト対策協議会・熊本県支部長 内田正寛氏
九州アスベスト対策協議会の熊本県支部長に就任した内田正寛・住商産業且ミ長に、設立の目的や今後の活動内容等を聞いた。
――協議会および熊本県支部設立の経緯・背景は何か
尼崎のクボタ事件にはじまったアスベスト問題は、国民の社会的不安を招き、信頼の府である行政にとって心痛の種になっている。この状況のなか、「10数年前に第1期のアスベスト処理を行った経験を持つ我々に何か出来ることはないのか」という思いからスタートした。ただ除去すれば良い、解体すれば良いという考え方ではなく、周辺住民の生命と健康を守り、企業としての社会的責任を果たす≠ニいうのが協議会の理念だ。
――アスベスト対策の問題点は
作業者だけでなく、除去工事中の周囲地域へのアスベスト飛散が社会的問題となっている。これは20〜30年後、地域住民にガン患者が発生した場合、責任があるのは発注者なのか施工者なのか、誰が賠償するのかという問題に繋がる。また、依然として囲い込みが多いとも聞いているが、これは問題の先送りにすぎない。早期に除去し将来にわたって安全な環境をつくることが重要であろう。
――行政の対応状況および要望は
積算根拠は何が一番正確なのか、発注形態はどうしたらいいのか―など、手探りの状態ではないか。先日、福岡県から九州対策協議会に、現法に基づいた最も安全な施工方法や積算方法に対する問い合わせがあって、即座に対応した。これからは行政に提案することも社会的使命の一つだと考えている。また、発注形態に対しては、特殊な工事であることから、地方自治法に基づき、適切に工事ができる専門業者に発注して頂きたいという思いもある。私たちは、公的資格と教育訓練、除去設備―の3つを備えているアスベスト対策のプロ集団だ。
――熊本支部の活動内容は
技術講習会や情報交換会、勉強会、積算講習会など行う。4月にはアスベストの処理技術で先進的なアメリカで7日間、リスクマネジメント講習会にも参加。施工体制の確立を目指す。当協議会会員は、公的資格として特定化学物質等作業主任者と特別管理産業廃棄物管理責任者の資格を全員が取得している。これら資格とアスベスト工事に対する設備を保有し、教育訓練体制も整っている。安全な施工の受け皿になって社会的責任を果たしたい。
――特徴を具体的にひとつ言えば
作業中には現場と周辺地域の粉塵濃度を測定するが、早くても翌日以降に具体的な数値が判明するのが一般的。もし粉塵濃度が基準を大幅に超えているのがわかっても、既にアスベストを体内に吸引していることになる。支部会員の施工時には、飛散状況を瞬時に測定できるファイバーエアロゾルモニターを設置する。周辺住民に対し、常に情報を公開することで安心して工事を見守っていただきたい。
――アスベスト処理で最も重要なことは
公的資格と処理施設の整備、教育訓練が非常に大事だ。全国の動向を見るといろんな処理対策が考えられてはいるが、工法にこだわって、どう処理するかに主眼を置いているように見受けられる。私たちが考えている最も重要な事は、管理者と作業者への教育訓練を行い、モニター等アスベスト処理機器を備えたうえでの安全な工法の開発だ。作業者はもちろんのこと、地域住民の命を守るという観点から考えれば当然のことだろう。 |