熊本県土木部 中尾 憲征 建築課長
 〜ユニバーサルデザイン建築ガイドライン案でパブリックコメント〜

 熊本県では、先月25日から「ユニバーサルデザイン建築ガイドライン案」のパブリックコメントを実施している。この指針の策定にあたっては、これまでの県内外のUDによる建物整備の事例を参考にし、学識経験者、建築家、高齢者・障害者・消費者の各団体で構成されたUD指針策定委員会(座長 田中摂南大学教授)による検討を重ねてきた。今回のパブコメでは、一般県民の方はもとより、建築関係者からも多くの意見をいただきたいとしている。
 ガイドライン策定作業の事務局となる熊本県土木部の中尾憲征建築課長に、ガイドライン案の内容、熊本らしい考え方、今後のスケジュール等を聞いてみた。


 −ガイドライン(案)の各章の内容を簡単にお願いします。
 序章から三章までの構成で、序章では、UDによる建物づくりを進めるうえで、建築主と設計者が共通の認識を得るための情報の提供を目的としています。
 続く、第一章では、「対話による建物づくり」を基本姿勢とした設計作業等の進め方、第二章と第三章では、UDの観点からの具体的な配慮事項、参考となる数値基準、事例等を掲載しています。

 −熊本らしい考え方をわかりやすくお願いします。 
 県では、今年2月に「くまもとUD振興指針」を策定しています。熊本におけるUDの取り組みでは、建物づくりのプロセス(過程)を重視しており、「対話によるデザイン」、「さりげないデザイン」、「追い求めるデザイン」を基本姿勢としています。そのため、設計についても計画段階から工事段階まで必要に応じて利用者の意見を聴いたり、使い始めてからも点検するようなことを提唱する内容が盛り込まれています。
 なんとなく当たり前のことですが、建築の技術者も使う側の人、管理する側の人の声を聴きながら、その建物を長く維持管理していこうということが基本にあり、そのためには建築主さんにこのことを十分理解してもらう必要があります。公共的な建物は当たり前にしても、デパートとか不特定多数の人が利用する商店街において、最初から誰もが利用しやすい建物であれば、維持管理の面でメリットがあるだけでなく、皆さんに喜ばれ、さらには新しい顧客の創出につながっていくのでは−という背景があります。

 −ガイドライン(案)に提案されている設計基準はどのようなものですか
 UDによる建物づくりとは、「年齢、性別、能力に関係なく、誰もが利用しやすい建物をつくること」でありますから、まず、様々な人が利用する場合を想定しています。高齢の人、車いすを使用している人、視覚障害を持つ人、子ども、乳幼児を連れた人、大きな荷物を持った人など、いろいろな人の行動を考えながら、設計基準を提案しています。
 しかし、このガイドライン(案)に示している基準に適合すれば十分というものではなく、あくまでも参考として設計段階で配慮していただきたい事項や基準を示しているものです。
 具体的に言えば、建物へのアプローチ、駐車場、出入り口、ロビーやホール、廊下・階段などの通路、エレベータやエスカレータの移動設備、浴室やトイレなど人が利用するすべての場所について基準を掲げています。
 また、公共施設や多数の人が利用する建物では、休憩所や授乳室などの確保も配慮していただきたい事項と考えています。
 そのほか、利用しやすい建物とは、行きたい所がすぐ分かることも大切なことであるため、案内サインなどの情報装置も表示を統一したり、単純化することで分かりやすいものとなるよう提案しています。

 −今回のパブコメで建築関係者に意見を求めたいことは
 このガイドライン(案)は、設計を行ううえでの参考基準としてだけではなく、学生への教材や建築主への提案、社内教育等の資料として建築関係者に幅広く使っていただきたいと考えています。建築主等にUDを提案するために序章の内容が十分であるか、作業の進め方が第一章の中で十分示されているか、UDの観点からの具体的な提案が第二章の掲載内容以外にないかどうか、これまでの経験を踏まえ、ご提案いただければと思います。

 −今後のスケジュールは
 12月24日まで広く県民の皆様からご意見をいただき、来年2月くらいにガイドラインを公表したいと考えています。
 来年度になると、県内各地で建築技術者向けに研修会を開催したいと考えています。
2002.12.05掲載

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