2023年秋の褒章で黄綬褒章を受章
アバンス取締役会長 工藤伸氏
地質調査は縁の下の力持ち
「地質調査業は、インフラを支える縁の下の力持ち。的確な調査で高品質な成果を出すことが、業界の認知度を高める上で重要だ」。長年の実績が認められ、前年の国土交通大臣表彰に続く受章となった。
会社設立以来、地元の地盤に精通した「技術力」と「提案力」を理念に掲げ、県内有数の地質調査会社に育て上げた。豊富な経験と統率力で周囲からの人望も厚く、熊本県や九州の協会トップを歴任。九州北部豪雨、熊本地震、令和2年7月豪雨では調査団長として指揮を執り、的確な指示で早期復旧を後押しした。
業界が抱える課題の一つに人材不足を上げる。「要因は、中高生の理科離れ。熊本大学では教育学部の理科教育から地学がなくなり、教える先生の養成さえできない状況」と憂う。
現場で作業するフォアマンも、業界全体で育成する仕組みが重要と説く。九州地質調査業協会の理事長時代に、オペレーターを顕彰する匠制度の創設に尽力した。「匠の認定者による技術の伝承や、技術者間の交流を深めることが大切」と話す。掘削機については「私が業界に入った頃からほとんど変わっていない。自動化と軽量化は喫緊の課題だ」と警鐘を鳴らす。
昨年11月の「土木の日」のイベントでは、副会長を務める御船町観光協会の協力を得て、急遽、化石発掘体験を開催。多くの子どもたちが化石探しに夢中になった。「遊びながら業界の魅力を伝え、底辺を広げていくことが有効では」と提案する。クリスマスにはお孫さんにハンマーと化石鉱物図鑑をプレゼントしたそうで、「とても喜んでくれた」と相好を崩す。
最近になって防災士の資格取得に挑戦した。「防災に携わる者として、ハードだけでなく、ソフトにも対応できる地域防災のリーダーを目指したい」と意気込む。昨年12月に社長を退き会長に就いたが、向上心が衰えることはない。71歳。 |