2023年春の叙勲で旭日双光章を受章
志水工務店 代表取締役 志水一博氏
地震に強い建物を追求
事務所に所狭しと置かれた祝い花を眺め、「こんなに祝意を受けて良いものかと戸惑いもあったが、今は熱心に接していただいた方々に感謝の念でいっぱいだ」。穏やかにほほ笑みながら受章の喜びを語る。
半世紀以上にわたる建築の道は、一貫して建物の重要な要素となる「構造」にこだわってきた。大学卒業後に勤めた大手建設会社で新耐震設計のコンピュータープログラムの構築に携わり、家業の志水工務店に戻ってからは地震に強く、地球に優しい建物づくり≠追究した。
100年に一度といわれる熊本地震では、一生の経験をした。益城町に建てた住宅は、地中深く強い基礎設計をしていたことから、周囲の大半の建物が倒壊している中で、二度の震度7の揺れに耐えた。大手テレビ局や大学機関などの目に留まり、構造模型実験や建物解析も行われ、大きな地震でも壊れない家だと実証された。「若い時から数多くの構造設計を経験したことが大いに活きた」と振り返る。
不動産業界では、熊本県宅地建物取引業協会の副会長を歴任し、熊本県宅建政治連盟の会長を務める。宅地に給水管を引き込めるよう共有持ち分道路の所有者同意を不要とする熊本市の条例見直しに尽力。「約7年の歳月を費やしたが、建築士、宅建士として人の役に立ちたかった」と利他の心がうかがえる。現在は、所有者不明土地と相続未登記の問題のより早い解決を期待している。
仕事の息抜きは長年続けている尺八と民謡。「毎日の忙しさが忘れられる」と顔を綻ばせた。熊本市北区在住、76歳。 |