国土交通省菊池川河川事務所長
 森田昭廣氏
知識や経験集積し防災レベル向上


写真 熊本への赴任は3度目。白川、緑川、球磨川に続き今回、県内全ての一級河川に携わる。「川によって地形や文化、歴史が異なり、地域が抱える悩みも違う」。地域とのコミュニケーションをベースに、川づくりの理想を追い続ける。
 入省以来、長崎大水害、伊豆大島の三原山噴火災害、雲仙・普賢岳噴火災害などが発生する度に、復旧支援や地元との事業調整に携わってきた。平成15年の水俣市宝川内地区の土石流災害では、現地に照明車と衛星通信車を派遣し、現場の動画を24時間体制で本省と本局に生中継。復旧活動と捜索活動を支援した。20年に国土交通省が創設したTEC―FORCE(テックフォース・緊急災害対策派遣隊)の先駆けだ。
 東日本大震災の際には、東北地方整備局で、九州のテックフォース隊の統括・指揮を執った。震度6弱の最大余震を経験して死を意識しつつも被災者のために≠ニ九州から運んだ排水ポンプ車を使って、一面海のような東松島市と石巻市の海水を取り除いた。
 「誰が被災者になるかはわからない。助け合う関係が大切。  昨年7月の九州北部豪雨災害では各地整から応援してもらった」。全国規模のネットワークを生かした支援の重要性を肌で感じ「知識や経験を集積し、ノウハウを組織で共有して次に繋げる。そうすれば防災レベルも上がっていく」と力を込める。
 菊池川流域では、小学生を対象とした体験学習や、市民団体・NPO法人らによる連携会議など、川で繋がる活動が盛んだ。「川って常に未完成でしょ。人間が全部を支配することは出来ない。でも、うまくつきあっていく心の豊かさや智恵がこの地域にはある。地域の皆さんへのコンサルタント的な役割を担っていければ」。
 妻と娘を佐賀県基山町に残し、久しぶりの単身赴任。休日には趣味のカメラを片手に山鹿市内の古いまちなみを散策する。「仕事で撮るのは完成写真とか、人の姿が見えない。それじゃ味気ない」と、30年近く人の入った景色や空間を撮り続けている。ファインダーの中に川づくりのヒントが隠されているのかもしれない。昭和29年生まれ、58歳。
2013.06.10掲載

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