平成24年度「現代の名工」に選ばれた
(有)米村塗装 代表取締役 米村利男さん
若い人に技能≠伝えたい


写真 「私には、親方がいないんですよ」と苦笑いを浮かべる。父親が創業した塗装店の2代目として、小学生の頃から数多くの現場で手伝いをしてきた。「小遣いを貰えるのがうれしくて」と続けていたが、父親や職人の仕事を見ているうちに、いろんな技術を自分で覚えていった。「ただ、家業を継ぐつもりなど全くなかった。親父も好きにしていい≠ニ言っていたので」と当時を懐かしむ。
 建物の内外部の壁面を仕上げる装飾塗装での優れた技能が、高い評価を受けた。櫛や綿などを巧みに使い、より実物に近い木目調や大理石調に仕上げる技法で、非常に手間隙のかかる作業だ。「職人にとって腕の見せ所。ただ、最近はクロスを貼るのが主流になってしまった」と表情を曇らせる。見た目によって得られる建物のイメージを高めるとともに、塗装の可能性を追求していくためにも、何としても伝承していかなければならない技能だ。
若手従事者の指導・育成にも力を注ぐ。技能検定委員や認定職業訓練校の指導員も務めているが、「実務経験はあるものの、技術力が伴わない若者が目立つ」と指摘する。「一番大事なものは本人のやる気=B自分のための資格なんだから」とハッパをかける。同時に、下地処理の重要性も説く。「どんなに仕上げが美しくても、下地がしっかりしていないと。見えない所だが、絶対に手を抜かないでほしい」。
3人の息子は、それぞれ別の道を歩んでいる。「後を継ごうか」とも言ってくれたが、「無理しなくていい」と断ったそうだ。逆にそのことで、「自分の持っているすべての技能を若い人に伝えたい」と強く思うようになったと明かす。これからも職人≠ニして、業界の発展に尽力していく覚悟だ。
 10月には5人目の孫が誕生した。「孫たちと遊ぶのが、何よりの楽しみ」と相好を崩す。昭和23年生まれの64歳。熊本市中央区神水で妻と2人暮らし。
2012.12.03掲載

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