国土交通省熊本港湾・空港整備事務所長に就任した
大呑智正氏
「目的は地域を良くしていくこと」
平成8年に旧建設省に入省。港湾行政に主務として携わるのは初めてだが「一つのツールが港湾なだけ。如何にその地域を良くしていくのか、河川にしろ、道路にしろ掲げている最終的な目的は同じだと思っている」。これまでの経験を踏まえ、物事の本質を見抜くことに迷いはない。
「熊本は港湾に対する期待が大きい。特に八代港は昨年、重点港湾にも選定され、自治体、地元企業の熱意が伝わった。ただ、施設を造ったら終わりではいけない。地元の方々がどのようにして使っていくのかが重要。そうした取り組みが次の整備へとつながっていく」。
学生時代は、土木工学の中でも橋梁の耐震性能について研究した。そんな折、大阪で阪神・淡路大震災を体験。「構造物を『安全に』から『大規模地震では損傷しても崩壊しない』へと耐震設計の思想が変わった」ことをまざまざと見せつけられた。
数年前には、イランの日本大使館で働いたこともある。そこでも死者が
3万人以上というイラン地震に遭遇し、国際緊急援助隊の派遣、緊急物資の供与などの調整役として腕を振るった。3年間の滞在期間中はイスラム文化に触れ、施しの精神を学んだ。「古き良き日本というか、家族を大切にし、人に優しい。思いやりがある」。
絵を見るのが好きで、パリのオランジュリー美術館やオルセー美術館によく足を運ぶ。オランジュリーで有名なのがモネの『睡蓮』。壁一面に張り巡らされた作品を見ていると「現実と違う世界に居るみたいな感覚に陥る」という。「何時間でもいたい。心が落ち着くんです」。本質を導き出す洞察力≠ヘ、写実から開放された印象派の巨匠から学んだのに違いない。
昭和47年生まれ。熊本市で家族と4人暮らし。 |