平成22年度「現代の名工」に選ばれた
(有)越猪工業代表取締役 越猪正高氏
「壁を一枚の絵≠ニして提供したい」


 「なかなか頂けない賞だと聞いていたので、本当に自分が受賞したのかどうか半信半疑でした」。思いがけない受賞に、驚きと喜びの気持ちがわき上がり顔がほころぶ。
 中学を卒業後、渇i野工業に入社。一から左官の技術を学び、日々精進。23歳の時には全国左官技能競技大会で優勝し自信をつけた。その後独立して、平成4年に級z猪工業を設立し、主に飲食店や個人住宅の内壁を多く手がけてきた。
 こだわっているのは、自然素材≠活かした塗り壁仕上げ。優れた技能を現場で実践しながら、新工法についても技術の習得に励んだ。得意とするのは、漆喰の本磨き仕上げ、蛇腹、戯木工仕上げ、イタリア磨きなどの、手間と高い技術力を要する特殊仕上げ。その美しさは高い評価を受けており、店舗等で変わった壁を見た同業者に「あそこの仕事は、越猪さんがやったんだろ」と言われるのが何よりも嬉しいという。
 また、壁のデザインにも人一倍こだわりを持つ。「一枚の絵だと思ってお客様に提供したい」との思いから、真っ赤に染まる夕日や山肌から見える地層など、自然風景を取り込み、人がまねできないデザインを数多く考案。その出来映えは、絵を掛けずに照明を当てるだけで壁がアートになるほど。
 現場で鏝を握る傍ら、熊本職業訓練短期大学校の実技講師や、「第48回技能五輪全国大会」の競技委員長主査を務めるなど、後進の育成・指導にも力を注ぐ。「左官職人は10〜15年ぐらいでは一人前とは言えない。常に現場に出て季節や天候、気温などの状況に応じた判断ができるよう経験を積んでほしい」と若年技能者にエールを送る。
 趣味はバラ栽培。熊本ばら会の理事も務め、年2回開催される展示会に出品するほど。「バラは病気や虫に弱いが、年間を通して管理すればちゃんと育ってくれる」。仕事のみならず趣味に対しても手間≠惜しまない。
 昭和22年生まれ。63歳。熊本市の自宅で妻と2人暮らし。
2010.11.11掲載

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