平成22年度春の叙勲で旭日双光章を受章した
(有)中川建築設計事務所会長 中川 久氏
「専門分野をもつことが重要」
「式典での席が陛下の真ん前で、とても感動しました。身に余る光栄です」と少年のように目を輝かせる。熊本県建築士事務所協会では初めての叙勲を受章した。「ほかの団体でも役員などを務めてきたことが、少しは役に立ったのかな」と控え目に話す。
中学生の頃、夏休みに作った校舎の模型が工作展で入賞し、担任の先生から「建築家を目指してはどうか」と熊本工業高校への進学を勧められた。卒業後、同校の創立60周年建築設計競技に応募し入賞。これがきっけとなり、設計への道を志した。
昭和39年2月に中川建築設計事務所を設立。数々の優良建築物を手掛け、なかでも医療・福祉施設の分野が得意で、病院専門の中川≠ニいわれるまでになった。それでも「最初は、簡単な医療の専門用語さえ分からず、打ち合わせにはとても苦労した」と振り返る。
病院には、一般建築にない特別な機器や設備があるため、専門的な知識が必要になる。手術室一つをとっても、眼科、産科、外科などで仕組みが異なり、気圧やクリーン度の基準もある。そこで、医師と知り合いになり、医療のことを一から徹底的に学んだ。
県事務所協会では、昭和43年から長年にわたり理事、常務、副会長を歴任。とりわけ平成4年から13年までの10年間は、副会長として5期にわたって会長を陰で支えた。「中に立つことは難しいが、やり甲斐もあった。ただ、間に入って会員の融和に努めてきただけ」と謙虚に語る。
低迷する建設業界にあって「世の中の基本は衣・食・住。その一端を担う仕事だから、決してなくなることはない」と持論を説く。建築士を目指す若者には、「多少の紆余曲折はあると思うが、ぶれることなく自分の目指す道を進んでほしい」と願う。そして、「得意とする専門分野をもつことも重要」と自身の経験を踏まえアドバイスする。
受章式には夫妻で出席し、2日後に73歳の誕生日を迎えた。「東京のホテルで2人でお祝いしたんですよ」と顔をほころばせる。熊本市在住。妻と2人暮らし。 |