平成21年度「現代の名工」に選ばれた
山本工務店 代表 山本勝義氏
「在来工法にこだわり、後進へ継承」
木材の複雑な組手等もさしがね一本で原寸出しする規矩術の第一人者。プレカット全盛と言われる現代でも在来工法にこだわり、後進へ継承し続ける。「分からない事は聞け。うろ覚えはいけない」。熱いメッセージがほとばしる。
大工一筋46年。きっかけは母親の「手に職を持てば、一生、飯の食い外しはない」のひと言だった。建築業の知人から紹介を受け、16歳の時に菊池市内の工務店に弟子入り。4年で棟梁に登り詰めた。
独立した昭和50年頃は、住宅建築ブームの到来で着工戸数も年々増加の一途を辿っていた。この間、技術研鑚に努め、これまでに200棟以上の社寺仏閣や住宅等を手掛けた。腕前を買われ、年間に十数棟もの依頼を一挙に引き受け、施主を2年も待たせることも。技能の日本一を競い合う技能グランプリにも3度出場している。
在来工法の魅力を「機械では表現できない曲線や木材の収まりを、さしがね一本で造り上げるところ」という。代表作の一つとなる阿蘇やまなみゴルフ倶楽部の茶小屋は、隅木の組手に自らが考案した特殊工法を取り入れ、「この時の努力が今回の受賞につながったのでは」と分析する。
大工仕事の傍ら、熊本職業訓練短期大学校の講師として後進の育成にも力を入れる。指導方針は厳しく、「在来工法を学びたいという若者がいる限り徹底的に教え、伝え続ける」。最近では、大工職を目指す若者が増えてきたと実感し、「明るい話題」と声を弾ませた。
帰宅後、自宅裏に構える作業場に一人こもり、新たな組手などを考えるのが日常のスタイル。現代の名工≠フ称号を与えられた今も「これまで100%満足した現場は一つもない」と言い切った。「まだまだ現役を続ける」。大工職を語る口調はどこまでも熱い。菊池市出身。62歳。 |