住生活月間功労者表彰で国土交通大臣表彰を受賞した
(株)田尻設計 代表取締役 田尻忠志氏
「使う人の意見を設計に反映」


 最初の設計依頼は昭和45年、実家がある地区集落の共同納骨堂だった。当時は、県外の設計事務所での単身修行を終え、故郷に一人で事務所を構えた直後。落ち着く暇もなく再び県外へ赴き、各地の納骨堂を調査した。
 自分に厳しく人に優しくとの信念を持つ。「人から頼まれれば嫌とは言えない性格だが、どんなに小さな事でも中途半端は絶対しない」。強い責任感で完成した納骨堂は、当時では斬新な神社建築風づくり。従来の冷たいイメージを払拭し、住民の喜びの声も大きかった。
 このころ、菊池西部地区消防組合庁舎(現菊池広域連合西消防署庁舎)の話も舞い込んだ。公共建築を手掛ける自身初の大事業で、どのようなデザインにするか一人で随分悩んだ。辿り着いた答えは「使う人の意見をよく聞いて設計に反映すること」。40年経った今もこのスタイルは変わらない。
 現在は熊本県建築士会で、執行部運営が妥当かを精査する評議員や菊池支部の相談役などを務め、業界の信頼を一点に集める。「責任や考えることが増えた」。ただ、いつも頭の隅にあるのは、昭和48年に仲間と一緒に立ち上げた青年部会の存在。「減少傾向にある若い建築士をこれからもバックアップしていきたい」。
 賞を貰った後、業界関係者や知人から御祝いの電報や花束が届いた。「やっと一人前の技術者として認められたかな」。社会への恩返しも込め、近い将来、事務所の一画にホームドクターのコーナーを設置し、地域に役立つ相談者として活躍することを構想中だ。
 旧西合志町出身。68歳。
2009.11.05掲載

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