(社)熊本県建築士事務所協会の会長に就任した
(株)桜樹会・古川建築事務所代表取締役 古川裕久氏
「コスト優先主義≠ノは疑問」



古川裕久氏 経済性だけを追求するコスト優先主義で本当にいいのか=B社会的不安を与えた今回の問題の原点がここにあると指摘する。「建築士には、国民の生命・財産を保護するという使命がある。適正な業務を行うには、適正な報酬が必要だということを、今一度、訴えていきたい」。6月に開かれた総会で、(社)熊本県建築士事務所協会の第7代会長に就任した。
 建築士を目指したのは中学生の頃。周囲の環境もあり、自然と建築を意識していた。熊本県立済々黌高校を卒業後、法政大学工学部建築学科に進学。昭和45年に東京の設計事務所に所属し、その後、帰郷。昭和50年、会社を設立した。
 数多く手掛けた作品の中で特に印象深いのが「草地畜産研究所畜舎」(阿蘇市)。くまもとアートポリスプロジェクトで、英国人のトム・ヘネガン氏らとの共同設計だった。その時のヘネガン氏の言葉が忘れられない。「僕は、仕事が終わればイギリスに帰るけど、古川さんは熊本に残る。将来、古川さんが困るような仕事は絶対にしない」。建物が完成した後も、責任を持つという建築家としての強いプライド。この作品は、平成6年の日本建築学会賞も受賞した。
 建築業界は、耐震偽装問題に伴う建築士制度の見直しや、PFIの導入など問題が山積する。制度の見直しについては、現在、様々な論議がなされているが「信頼を回復するには、建築士がプライドと倫理感を持って仕事をしていくこと。これに尽きる」。
 PFI事業に対しては、課題も多いと指摘する。「どんなに良い設計を提案しても、総合評価のため建築コストが優先されているようだ。公共施設として、本当に10年、20年後も質の高い建築であり続けるのか。十分検証していく必要がある」。さらに「公共事業における設計・施工の一貫方式も問題だ。分離発注という、建築の本質から懸け離れている気がする」。
 トレードマークの長髪≠ヘ、学生時代から。「建築にも自分にも個性を持ち続けたい」。照れ臭そうに笑う。 
 昭和22年生まれの58歳。熊本市在住で、妻と娘3人の5人暮らし。
2006.07.20掲載

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