現代の名工に選ばれた
共和建設(株) 取締役会長 陳内敏之氏
『卓越した技能を持ち、その道の第一人者』。現代の名工は、技能の世界を渡り歩くものにとって憧れの的だ。職人を目指す若者に目標を示し、夢と希望を与える。「建築大工では全国で4人しかいなかった。思いがけない賞で感動している」。目標を達成した熟練技能者にはその価値がひしひしと伝わってくる。むしろ老練だからこその味わいかもしれない。
大工だった父の後を継ぎこの道に進んだ。当時は農業をしながらの季節労働者だったので農閑期を利用して修行した。数年間建設会社にも勤め、腕を磨くうちに責任のある仕事もこなすようになり、昭和42年に独立。今の会社の基礎を築いた。
これまで数多くの社寺仏閣を手がけてきた。伝統建築の技術は、師匠である父から教わりながら、自分でも図面を取り寄せて研究した。「大学に通っていた息子から、国宝級の図面を送ってもらったこともある。実際に伝統建築物を見ながら、会得したものも多い」。自ら行動することで職人としての欲求を満たしてきた。
育て上げた弟子も30人を超える。特に力を入れて教えてきたのはさしがね術の中でも難しいといわれる規矩術。プレカット全盛の現在では、プロの大工でさえ、この技術を完璧に使いこなせる職人は限られているという。玉名職業訓練校運営会では会長として、次世代を担う職人を育てている。もちろん『仕込む』のは規矩術だ。
木彫が好きで、地元の文化祭などに出展している。作品として仕上げるのは鷹を題材としたものが多い。「鵜の目、鷹の目と言われるように鷹は遠くから獲物を見つけるいい目を持っている。そんないい目を持った自分でありたい」と職人の鋭い目が輝く。
玉名市築地の自宅で5人の家族と暮らす。昭和5年生まれ74歳。
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