自伝「ミラクル・BOX」を発刊した
(有)加耒建設(荒尾市)代表取締役 加耒恵美子氏
自伝を出版するきっかけとなったのは新聞で見た出版社の作品募集広告。本にはこれまでの壮絶な過去や建設業界に対する思いなどが赤裸々に綴られている。
3年前、地元荒尾市で土木業を営む父親が病で倒れ、会社を継いだ。社長に就くことは考えていなかったという。経営者としての経験も知識もない自分が社員の人生まで引き受ける事が無責任に思えたからだ。一度は苦渋の決断で会社を整理した。仕事一筋で自分の利益を仲間に分け与え、みんなを引っ張っていく頼り甲斐のあるリーダー。そんな父親が一代で築き上げた会社を小さいころから見て育った。やはり会社なくしてはならないと再起を誓った。
「私はまだ3歳なんです。やっと歩き始めたところ」と自らの立場を表現する。男社会の建設業界での風当たりは強く、父親の代から比べ、受注が一時、20%までに激減した時もあった。「『女だから、若いから、実力がないから』との理由に、これまで付き合いのあった会社から取引の断りも受けました」と3年前を振り返る。
子供の時から負けず嫌い。何でも1番、リーダーにならなければ気が済まない性格。いろんな人からの言葉で奮起し、今では、社員12人が働く男所帯の会社へと再生させた。
「弱い者、小さい者は淘汰されていく時代。中には健全な考えで努力をしている企業はあります。しかしそんな会社もふるい落とされてしまっている現状。建設業界にも元気が出るよう、皆を引っ張っていくリーダーの存在が必要ではないでしょうか」と訴える。
会社ではクリーンでオープンな自然と共生する建設業≠目指している。2年前に県から請け負った冷水川の河川工事では、社員のアイデアも取り入れ、自然に配慮した施工を心がけた。捨てるはずの石を拾い集め川底に敷き、清流にしか育たないクレソンを上流に移植するなど、魚が住める美しい川づくりを目指した。その工夫が認められて、県からは80点以上の高い評価を受けた。
社長を務める傍ら、子供向け絵本、小説など執筆活動を続け、最近では講演会の依頼も受ける。睡眠時間は平均3〜4時間。「疲れた時は、現場で働いている社員を見に行きます。過酷な現場で頑張っている社員の姿を見ると元気がでます」といつも自らを奮い立たせている。
昭和40年生。4人の息子の母親。 |