春の叙勲で勲五等瑞宝章を受章した
(株)十八測量設計取締役社長 春本永禄氏
周囲の反響は思った以上に大きかった。「大変なものを頂いたんだな…」。このほど春の叙勲で熊本県測量設計業協会での功績が称えられ勲五等瑞宝章を受章。控えめな口調ながらも喜びを語る。
測量業界に入ったのは、県内工業高校土木課卒業後の昭和27年。友人から測量の手伝いに来ないかという誘いがきっかけだった。恩師を含め3人ではじめた会社は戦後日本の復興と共に成長。順風満帆な日々が続いた。しかし、16年間勤めながらも思うところがあり退職。この業界からも足を洗うつもりだったという。
ところが「こんな私を慕い、後輩たちも辞表を提出したんです。先輩が辞めるのならと」。退職した後輩たちと現在の(株)十八測量設計を設立。県内有数の測量会社へと育て上げた。「ここまでやってこれたのも、私についてきてくれた後輩たちや社員のお陰ですよ」。
これまで技術屋として腕を慣らし、手掛けた仕事も数知れない。印象に残るのは阿蘇やまなみハイウェイ。「観光道路としていかに線形を決めていくか、よりコストを削減するためにはどうすればよいか、かなり悩みました」。
実際、やまなみハイウェイには構造物等が少なく、コスト面の削減ということでも苦労したあとが伺える。「今でもあの道を通る時は、当時の仕事が蘇ります」。12月の寒い吹雪の中での調査を思い出す。
協会では、発足当時から理事を務め、会長職という重責も担った。業界に国際社会に通用する高度な技術の修得を求める。「誰かではなく、自分が引き上げていくというリーダーシップを発揮する者が必要でしょう」。
『ジャン・クリストフ』(ノーベル文学賞作家ロマンローラン著)を愛読する。ヨーロッパ革命時代、逆境に圧迫されながらも、いかに人間らしく生きるかを決して忘れない主人公クリストフに自分を重ねる。「私の考えもそうです。視野を広く、人間性を失わない人生を全うする」。西合志町在住。72歳。 |