労働安全コンサルタント 阿部敏克さん
働く人の感受性高め事故防止を!


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 労働安全コンサルタントの阿部敏克氏(阿部労働安全コンサルタント事務所、菊池市片角)は、ゼネコン技術者としての経験を生かした活動を行っている。7月1日〜7日までの労働安全衛生週間に伴う行事では、県内各地の企業で講演。経験に裏打ちされた独自の視点で阿部節≠披露している。




〈昭和30年に熊本工業高校を卒業し、大手ゼネコンへ。以来37年の年月を土木畑に捧げてきた。ダム、トンネル、シールド…など様々な現場を体験し、自ら現場代理人としての経験を持つ。高度成長著しい日本各地の現場を渡り歩きながら『安全』と深く向き合ってきた〉
 当初、私が目指したのは鉱山技師で、土木科を出た訳ではなかったんです。ただ測量・設計、土質調査などの技術があったので3年程勉強して、本格的に土木現場を経験するようになりました。建設業は工種が多い上、どこの現場に行っても危険と隣り合わせ。安全を左右するのは、常に現場の指導者だと思っています。
〈労働安全衛生法(昭和47年)がない時代、技術者は、工程・原価・品質管理の分野でライバルを凌駕することに心血を注いでいたという。この三つを上手くこなしていくことで技術屋の腕≠ェ評価されていた。法制定後は加えて安全管理が強く求められるのが技術者であり、現場のリーダー。有能、情熱、責任感といった目には見えないスキルを身につけることを訴える〉
 工程・原価・品質管理はやればやるだけ結果がでます。安全管理はやってもやっても結果が出ないんです。どんなに頑張っても1回事故を起こせば元の木阿弥。昨日の安全は今日の安全の保証にならない。事故防止で重要になるのは、働く人たちの感受性を高めていくことなんです。それは人の上に立つ人、特に現場の指揮を執る人が、日頃から安全に対する意識付けを怠らない熱心さかと。
〈阿部氏はゼネコンでの最後の勤務地となった大阪支店時代に安全部長の要職に就いている。そこで死亡事故2件を含む重大事故を経験。その時の苦い思い出が安全に対する教訓となっていることは言うまでもない〉
 その頃は安全屋として力の無さ、虚しさだけが残ってしまって。一生懸命勉強し、実践してもそれが結果です。今はリスクアセスメントという手法があり、企業が存続するためには避けて通れません。安全管理は結果で評価されます。広い意味での経営活動といえるでしょう。不断の努力、日々の改善。ゼロ災は経営力そのものなんです。

【メモ】
リスクアセスメント
 労働災害や事故が起こる可能性と発生した場合のケガの大きさが、どの作業にいつ、潜んでいるかを調査(洗い出し・見積り・評価)し、適切なリスク低減対策を実施すること。平成18年に改正、施行された労働安全衛生法で、この手法による労災防止が努力義務事項とされている。
2011.7.18掲載

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