(株)旭技研コンサルタント 平田光也技術部長
予備・概略設計の段階が一番の苦労


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 今年度に阿蘇中部地区広域営農団地農道整備事業で取り組んだ功績が認められ、熊本県農村振興技術連盟から表彰を受けた。“すぐれた技術と献身的な努力”が評価されたもので、建設コンサルタント業では唯一の受賞となった。



〈受賞の対象となった業務では技術管理者として存分な力を発揮した。現場は墓所があったり、軟弱地盤だったり…。図面を画餅に帰すことが無いよう、これまでの経験を活かし、いろんな取り組みにチャレンジした〉
 墓所があるところを避けながら、如何にして交通安全上、良い線形をとることが出来るか。3Dによるシミュレーションを作成し、それを地元協議にも活用した。我々は地元の同意がなければ何も出来ない。結果的には好評を博し、納得いく線形がとれたと思う。阿蘇カルデラ内の堆積層からなる軟弱地盤に対しては、経済性や環境への配慮から石灰を使った工法を取り入れた。
〈農道の設計では、線形計画のほか、水路、暗渠、用水路の切り回しなど、水田耕作に必要な施設が付随する。ただ、平田部長の頭を過(よぎ)るのは自然環境だ。そこに棲む生き物たちがこれまでと同じように生活できるような提案にも抜かりがない〉
 ビオトープの観点から、小動物が道路を横切るためのボックスを一カ所設けた。生態系の確保には特に気を使うところ。工事はこれからだが、農道が完成してから、赤外線カメラなどを活用して、その効果を確かめることも敢えてしていきたい。
〈30数年この業界に携わってきており、元々、高速道路の設計が得意分野。特にIC(インターチェンジ)の設計は十八番(おはこ)で、これまで益城ICの予備設計に携わったほか、大分自動車道宮河内ICでは詳細設計を担当した〉
 高速道路は当然、一般の道路と規格が違い、専門の知識が要求される。ICは、本線から安全に走行できるよう現場にマッチしたものでなくてはならず、線形の組み合わせが難しい。設計全体に言えることだが、無から生み出す予備・概略設計の段階が技術者にとって一番苦労する。事業費も含めプロジェクトの全体を左右するので。

【メモ】
ビオトープ
 生き物(Bio)がありのままに生息活動する場所(Top)という意味の合成されたドイツ語。開発優先への反省にたち、自然が自ら再生できるように人間が配慮する運動として、1970年代にドイツで始められた。環境省は入札参加資格審査申請における有資格の一つにビオトープ管理士(恣本生態系協会認定)を指定している。
2009.10.15掲載

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