土壁の家工房 (有)田口技建  田口 太 社長
伝統建築“本当にせんばいかん”



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 「伝統構法を活かし、出来る限り土に還るもので家造りをしていくことが大切だ」。木組み工法に土壁を使う伝統的な日本の建築を愛する職人がいる。300年以上は持つと言われる伝統住宅で2代、3代と永く住んでもらいたいと願うのは、土壁の家工房挙c口技建の田口太社長だ。



〈住宅業界は、10数年前から住宅メーカーのフランチャイズが跋扈し、高気密住宅という新しい流れに飲み込まれている。田口社長は、土壁の家にこだわる父と一緒に、職人として自分の腕を磨いてきた。その岐路に立った時、大いに悩んだ〉
 親父はこれから引退する身だが、自分はこれから。土壁を薦めてもコスト面などで断られる。諦めかけている時に先輩から「自分の得意分野で行かんか」とアドバイスを受けた。本腰を入れてからもやれローコストだ、高気密だ、と周りから相手にされない。ただ、やるからには施主にちゃんと説明できるよう伝統構法のデータ、情報を集めた。
〈転機は数年前に訪れる。従兄弟の住宅を設計・施工した時だ。建設過程で当時、熊本県内で土壁研究の第一人者だった大橋好光熊本県立大学助教授と出会った。1級建築士を持つ田口社長が現代風にアレンジした意匠も好評を博した〉
 以前から知り合いだった川尻六工匠の古川社長から大橋先生を紹介してもらった。従兄弟の家は先生の情報を手がかりに建てた住宅。今はうちの住宅展示場として活躍している。施主は住宅雑誌などを見て伝統建築の良さは判っている。でも、高くて到底無理だろうという先入観がある。実際に見てもらうと180度考え方が変わる。
〈土壁は施工する季節、天候によって品質が大きく左右される。まさに自然との闘いである。乾かし方には長年のカンがいる。材料の竹も旬のものを、土も場所が一定のものを使う。通常、土と藁を練ったものに強度を出すために砂を混ぜる。柱にはチリジャクリと言われる特殊な溝を施し、壁と柱の隙間を出さない工夫をしている〉
 家は永く住んで住み心地を感じて欲しい。伝統構法の家は、枯れることで性能が上がるし、味が出てくる。古くなって良いなあ、と思ってもらいたい。そのために熊本の伝統構法の会で勉強している。構法・技術の継承はもとより、何よりも欠点を探し克服するためだ。
 手間を掛けずに如何にいい仕事をするかが職人。そうした努力によって、お客さんに良いものを安く提供できる。親父たちがしてきたこつば本当の意味でせーにゃいかん=B

【メモ】
土 壁 竹小舞と呼ばれる竹を格子状に縄などで編み、その上に土と藁を混ぜたものを最初に塗る。その後、土と砂、藁などを混ぜた中塗り、漆喰仕上げなど最低でも5〜6工程をかけて完成。木や土が湿度を調節し、断熱性も優れている。
2008.09.18掲載

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