熊本県建設業協会
会長 前川浩志氏
会員メリット追求し持続可能に
熊本県建設業協会の新会長に前川浩志氏(八方建設)が就任した。担い手の確保・育成や働き方改革、生産性向上など様々な課題が山積している中での難しい舵取り。業界紙とのインタビューに応じた前川会長は「県民の安全安心を守るために尽力する全協会員を誇りに思う」と胸を張り、会員ファーストの姿勢を貫く。会員メリットを追求し持続可能な環境づくりに全力を注いでいく構えだ。
――就任の抱負を
土井前会長のもと協会の専務理事を3期6年務めて、様々な要件に携わり、会員の目線とは異なる事務局からの目線、政策的な目線など様々な角度から物事を見ることができた。この経験は非常に大きく、協会として何を優先してやっていくべきなのか、何をすれば協会員全体の幸福量を増大できるのか、きちんと考えていかなければならない。
協会の全会員においては、幾多の大災害で命がけの素早い初動対応、その後の迅速な復旧復興に尽力され、県民の安全安心を守ってきたという自負があり、私自身、本当に会員を誇りに思っており、敬意を表したい。
688社の全会員の心を一つにまとめ、県民の安全安心を守るエッセンシャルワーカーとして認知されるよう、建設業界のイメージアップを図りたいというのが、今の一番強い思いだ。
――県内建設業界の現状と課題、解決策は
来年度からいよいよTSMC周辺のインフラ整備が本格的に始まる。国、県、自治体、民間を合わせ、菊池地域でこの10年間に想像を超えるような事業量が出てくると考えており、とても地元の会員企業だけで対応できる量ではないと思う。他地域の協会員の協力も必要となってくるだろう。
総会での会長就任時に「人材確保が一丁目一番地」だと申し上げたが、これは何故か。菊池支部の支部長だった今年2月、管内の老舗業者から協会を退会して廃業すると言ってきた。理由を聞いたら「後継者がいないし、技術者も高齢化し自分を含めて3人しか残らない。とても続けていく自信がない」ということだった。社長はまだ50歳代、将来の支部活動を支えてくれると信じていたので本当にショックだった。
人材不足はどの産業も同じ。他産業との採り合い、競争をしなくてはいけない。そのためには「建設産業っていいよね、いいことやっているよね」と思ってもらえるような雰囲気づくりが必要だ。若者から選ばれる建設産業を目指し、労務対策委員会をはじめとする四つの委員会、青年部、建麗会などと力を合わせ、人材確保に向けた広報活動などイメージアップ戦略を力強く実施してきたいと考えている。特に若手会員の知恵と活力は不可欠なので、青年部の活動をこれまで以上に支援していく。
――行政・発注機関への要望は
事業量で言えば、TSMC進出に伴い関係地域の道路予算は多く確保されていると思うが、そうでない地域との格差が大きくなっている。発注者には、バランスのとれた事業の推進をお願いしたい。
働き方改革に関しては、国・県等が週休2日工事に補正係数を適用しているものの、受注者からはそれでも足りないという声が多い。完全週休2日となると更に厳しくなるのではないか。特に市町村は、設計変更を含め取り組みが遅れている。
国は物価上昇を上回る賃金アップを提唱している。しかし適正利潤が確保できないと賃金を思うように上げられない、賃金を上げないと人材も入ってこない、全てが繋がっている。労務単価を12年連続で引き上げていただいたことには感謝しているが、現状の作業量に即した歩掛に見直してもらわないといけない。民間工事では、発注者に適正工期の確保などを強く求められない部分もある。
そのような中、第3次担い手3法が成立し、国から発注者への強い働きかけ、指導・勧告等が盛り込まれた。建設産業に明るい未来の兆しを感じさせるものと期待している。課題を解決するには、我々の意識改革、取り組みだけでは限界がある。行政と一緒になって建設産業界を盛り上げていきたい。
――協会の運営方針および協会員に向けてのメッセージを
冒頭で申し上げたが、全ての会員に対して誇りを持っている。土井前会長が6年間、開かれた風通しの良い協会に努められたので、声が届きやすくなったと感じている。
688社の会員からなる協会は、県のA1からA2、B、Cまで幅広いランクの企業から成り立っており、それぞれのランクの会員のことを思いながら事業を進めていきたい。災害時に自前の機械を持って小回りを利かせて活動できるのは、地域に精通したB、Cランクの会員が多い。1月の能登半島地震では、地域建設業界の規模が小さく疲弊していたため、被災地の復旧活動が遅れたという話も聞く。
地域の安全安心を支えている会員企業が持続可能なものとなるよう、協会員であることの存在意義を高めるためにも、会員であることのメリット、インセンティブを追求していく。会員の皆様には協会活動へのご理解とご協力をお願いしたい。 |