熊本県土木部長に就任
宮島 哲哉氏
「現場主義」基本に施策展開
建設産業振興プラン 9月策定へ


 熊本県土木部長に4月就任した宮島哲哉氏は、西日本建設新聞社のインタビューに応じ、「現場主義」を基本に災害からの復旧・復興や、幹線道路ネットワークの整備、熊本都市圏の渋滞対策、セミコンテクノパーク周辺のインフラ整備等に全力で取り組む姿勢を示した。県内市町村の課題には、地域の声を聞いた上で施策に反映させる。今年度は、県内建設産業の方向性を示す「建設産業振興プラン」の次期計画がスタートする。働き方改革や魅力発信に努め、「熊本の未来をつくる地域の担い手」として、持続可能な建設産業の育成へ傾注する。



−−就任にあたっての抱負を
まずは「県民の命と暮らしを守る」を最優先に、令和2年7月豪雨と熊本地震からの復旧・復興に全力で取り組みたいと考えている。
 私が入庁した1988(昭和63)年以降、県内は河川氾濫や高潮、噴火、地震、集中豪雨など多くの災害に見舞われており、災害への備えの重要性は強く認識している。災害はいつどこで起こるのか分からないので、県内全域で 防災・減災、国土強靱化の取り組みも加速化していかなければならない。
 2024年度は木村県政スタートの年になる。知事は常々「現場主義」を口にされており、それは私どもの基本中の基本である。
 (TSMCの進出により)県北エリアが脚光を浴びているが、県内の45市町村は、人口減少や社会情勢の変化に伴い、それぞれの異なる悩みを抱えている。現場に直接足を運んで地域の声を聞き、施策に反映させ、地域の課題解決に向け、市町村と連携した社会基盤整備を心がけていきたい。

−−土木部の24年度主要施策についてお尋ねします
 熊本の発展に不可欠な九州の縦軸・横軸となる幹線道路ネットワークの整備、それから知事の公約にある熊本都市圏の渋滞対策をしっかりと推進していく。半導体関連企業の更なる集積が見込まれているので、産業拠点の形成に必要な道路、下水道など、関連インフラの整備は集中的に進めていきたい。災害対応に関連した緑の流域治水や、物流の基盤となる港湾機能の強化にも取り組む。
 建築関係では、本県独自のアートポリス事業が効果的に活かされており、能登半島地震でも「熊本モデル」の木造仮設住宅が整備される。その他に「みんなの家」など地域コミュニティの場づくりなど社会のニーズに対応した取り組みも発信していきたい。
 また24年度は、県内建設産業の方向性を示す「建設産業振興プラン」の次期計画がスタートする。今後、パブリックコメントなどの手続きを経て、9月をめどに策定できればと考えている。24年度から28年度までの5年間がプランの期間となる。

−−「10分・20分構想」の実現へ熊本都市圏3連絡道路の検討が始まりました
 国の技術的な支援もいただきながら、県と熊本市で住民参加型の道路計画および有料道路制度を含めた事業手法の検討に着手した。24年度は大きくステップアップさせる勝負の年だと捉えている。
 ただ、この道路だけで熊本都市圏の渋滞を全て解消するものではない。高規格道路は基本的にはインターチェンジで他の道路と接続するので、既存の道路ネットワークとセットで見ていく必要がある。整備中の西環状道路や中九州横断道路が供用されれば、都市圏交通の流れも変わっていく。
 今後、複数のルート帯案を示していくが、その際に、県民・市民がこの道路に何を期待しているのか、何を重視するのか意向を伺いながら進めていきたい。

−−セミコンテクノパーク周辺地域のインフラ整備が急務となっています
 道路については、大津植木線の多車線化と、4車線で整備する合志インターチェンジアクセス道路を2月に都市計画決定した。元々通勤時の渋滞対策が課題であった地域へ更に企業が集積するということで危機感があり、通常の進め方では到底追いつかないため、都市計画決定前に住民説明会を開催し、地権者を個別訪問して事業の進め方など計画の内容を説明しているところ。
 現時点で地権者が319人おられ、一通り回り終えた。用地補償の考え方の説明も並行して進めていて、5年後(2028年)に供用できるよう取り組む。合志インターへのアクセス道路は、バイパス部分を遅くとも28年度までに完成させたい。
 セミコンパークと空港を結ぶ縦軸の菊陽空港線については既に跨線橋工事に着手しており、できれば26年度には供用開始したい。
 道路整備に加え、公共交通への転換や短期的な取り組みとして交通管理者と連携した信号制御の見直し・交差点改良なども展開していく。
 下水道については、地域産業構造転換インフラ整備交付金を活用し、処理場の位置を決めるための調査や、最終形としての最大設定規模、1期の規模、排水先などを分析・検討している段階だ。今年度中に、都市計画決定と事業着手までもっていきたい。

−−建設業の働き方改革に向けた取り組みは喫緊の課題です
 週休2日を前提とした先積みの積算方式の導入に加え、今年1月からは、仕事の効率化を可能にする遠隔臨場に要する費用を発注者が負担する取り組みを始めた。遠隔臨場は、現場に職員が来るまで待機するなど日程調整せずとも、タブレット等で現場の状況をリアルタイムでお互いに共有できる。単に「2日間休んでください」だけでは負担がかかるだけ。かなり効率化できるのではと期待している。
 加えて、「書類をもう少し簡素化ができないのか」「工期の設定はもう少し細かく丁寧に決めていく必要がないのか」といった議論も進めている。品確法にあるように、現場の実情に合わせた工事発注、仕様が大切だと思っている。
 県がこういった取り組みを先導し、市町村にも同じようにやっていただくようにしていきたい。

−−担い手確保に向けた取り組みは
 建設業団体の協力を得て高校生への説明会や建設産業ガイダンスを実施しているが、もっと幅を広げ、例えば小中学生や保護者へのアプローチ手段としてフォトコンテストの実施など、入職を前提とした告知だけではなくて、若い人たちに建設産業の魅力や役割を知ってもらうことが重要だ。多くの人に知ってもらうことで直接的または間接的に建設業に興味を持っていただき、就職先として考えてくれたらという視点だ。
 土木部は、昨年にインスタグラムを開設し、活動状況などをアップし、できるだけ多くの方の目に触れるよう努めている。

−−県内建設産業界へのメッセージをお願いします
 言うまでもないことだが、「地域の守り手」として県民の命と暮らしを守る不可欠な存在だと認識している。特に、災害時には、応急の復旧活動や災害調査等に優先して尽力いただいていることにまずは感謝申し上げたい。
 もう一つが、継続して取り組んでいる防災・減災、国土強靱化に加え、都市圏の渋滞対策や幹線道路ネットワークの整備など、「熊本の未来をつくる地域の担い手」としての役割が更に重要になっていることだ。
 必要不可欠なパートナーとして業界と行政が連携し、人材の確保・育成や生産性の向上、働き方改革、そして持続可能な建設産業の育成へ、更に力を入れていきたい。引き続きご支援ご協力をお願いしたい。
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【略歴】宮島 哲哉(みやじま・てつや)。1964年5月6日生まれ、88年熊本大学工学部卒業、88年熊本県技術吏員、2017年県央広域本部土木部副部長、18年県央広域本部土木部益城復興事務所長、20年土木部道路都市局都市計画課長、21年土木部道路都市局長、24年土木部長。
2024.6.10掲載

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