熊本震災復旧復興工事労災防止支援センター
江上 吉成所長
労災防止対策は「教育」が一番

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 熊本地震からの復旧・復興工事に携わる建設事業者の安全衛生活動を支援するため、建設業労働災害防止協会が昨年立ち上げた熊本震災復旧復興工事労災防止支援センター。7月からは、前熊本労働基準監督署長の江上吉成氏が所長に就任した。「労働災害を防止するため一番必要なものは教育≠セ」と断言する江上所長に話を聞いた。




――県内では労働災害が増加しています。要因は何でしょうか
 熊本地震からの復旧・復興工事の本格化に伴い、工事量全体が大幅に増えている点が考えられる。人手不足も大きく影響しているようだ。被災住宅の解体現場では、既に建設業をリタイヤしていたであろう高齢者が駆り出されていたり、他産業からの転職やアルバイトなど一目で未経験者だと分かる若者の姿も見受けられる。体力的な衰えや安全レベルの低下などは否めない。

――過重労働も心配です
 復旧・復興工事の早期完成という大命題に水を差すわけではないが、工期に追われ受注者だけでなく、発注者側も相当無理をされているのではないかと危惧している。復旧までの工期が2〜3カ月程度ならともかく、3年、5年、10年と長期にわたるような工事では特に心配だ。
 さらに、工期を優先すれば、現場の安全対策が疎かになるケースもある。一つひとつの作業を確実に検討しながら潜んでいる危険性を排除し、一番安全な工法を見極めなければならない。

――就任に当たっての意気込みを
 長年、行政に席を置いて分かったことは、労働災害を防ぐために一番必要なものは「教育」だということ。現場の安全性を高めるには、様々なケースに対応できる判断力や対応力が必要となるが、経験だけではカバーしきれない。数多くの事例や対処法などを学ぶことで、安全に対する感性を磨いてほしい。私自身、これからも復旧・復興工事の安全対策に携われることができ、ありがたく思っている。

――多くの事業者に支援センターを活用してもらいたいですね
 経験豊富な指導員や講師が、現場巡回指導と安全衛生教育を無料で行っている。4月からは熊本北支援センター(菊池市)も開設した。誤解しないでもらいたいのは、行政機関と違い違反等を摘発するのではなく「改善点をお伝えする」というスタンスであること。自分達だけで現場を見て管理していくには限界がある。視点を変えるためにも、外部の人間から現場の見方などを学び、安全対策に繋げて頂きたい。

【問い合わせ先】
 熊本支援センター(電話080・1265・5433)▼熊本北支援センター(電話080・1351・1366)。
2017.8.17掲載

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