国土交通省立野ダム工事事務所
鵜木和博所長
地域に愛されるダム造り

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 立野ダム建設事業は、平成28年度中の本体工事発注を控えていたが、熊本地震の影響で今年度に延期された。復旧工事もメドが経ち、本体着工に向け着々と準備が進められている。国土交通省立野ダム工事事務所長に就任した鵜木和博氏は、洪水調節機能だけでなく、地域の観光資源となるような愛されるダムづくりを想い描く。




――地震や豪雨による被害とダム建設への影響は
 工事用道路の河床進入路や仮橋等が被災し、阿蘇大橋地区等の斜面崩落などで河川に土砂が流入しましたが、ダム本体の建設予定個所に大きな被害はなかった。現在、新工事用仮橋や左岸工事用道路(上部)、左岸斜面復旧工事が順調に進んでいます。
 地震後に、ダム構造、地質、活断層などの専門家による技術委員会を立ち上げ、建設は十分可能との結論を頂いた。周辺自治体からは、24年の九州北部豪雨を踏まえて早期建設を望む声が寄せられており、期待に応えられるよう準備を進めています。

――ダムの効果と現在の進捗は
 本体は、高さ約90b、総貯水容量約1010万立方bの曲線重力式コンクリートダムで、平常時は水を貯めず、洪水時に一部貯留して洪水調節する流水型を採用しています。九州北部豪雨と同規模の洪水では、ダム下流(白川水系)の大津町、菊陽町、熊本市の水位も低減し、河道や遊水地の整備と合わせて河川の氾濫を防止できます。
 29年度予算には約48億4000万円を付け、本体工事の他に工事用道路等の整備に取り組みます。総事業費は約917億円で進ちょく率は57%(27年度末時点)。完成は34年度を予定しています。

――熊本地震について
 発災当時、整備局の河川工事課長として、前震直後に熊本に入り、テックドクターと緑川・白川の堤防被災状況の調査や、早期の復旧に向けた検討を行っていた。その時、本震の凄まじい揺れも体感した。
 地元の建設業者の皆様は、ご自身も被災された中、地域の安全・安心のため昼夜を問わず復旧工事に従事して頂き、頭が下がる思いです。技術者魂を感じるとともに敬意の念を抱きました。

――現場主義をモットーにされているとか
 災害現場に限らず、時間がある限り、現場には足を運ぶようにしている。災害や施工上のトラブルは、現場の環境で異なります。現場の条件を確認し、いち早く対策を取ることが大事だと思っています。
 休日は、全国の土木遺産などを巡り、技術者の「想い」や「熱意」を感じています。最近では、観光スポットとして注目を浴びている大分県竹田市の白水堰堤が印象的でした。地形や地質に応じて施工されており、知恵と技術が凝縮された意匠的な構造になっています。
 立野ダムも完成後は、地域の観光資源になるような取り組みが出来ないか、思いを巡らせている。見聞した知識を活かし、施工者とともに、地域に愛されるダムを造っていきたいと思っています。
2017.6.19掲載

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