夢は土木技術者
普通高校卒の18歳女性が挑戦
九建 大塚沙亜也さん
「女性も現場で活躍できるんだ」と思われるよう努力したい



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 熊本県内の土木業界に若い女性が飛び込んできた。4月1日、九建(熊本市北区植木町、新永隆一社長)に入社した大塚沙亜也さん。工業系高校でも専門学校でもない普通高校を卒業したばっかりの18歳。「早く現場に出たい。技術者になりたい」と目を輝かせ、 作業服にヘルメットを被って挑戦を始めた。




――建設業に就職した理由は
 高校3年生の時、就職フェアで建設業事務の仕事を探していたら、新永社長から「土木技術者になってみないか」と声をかけられたのがきっかけです。
 やりたいことは沢山あるけれど、何をしたいとかは決めていなくて、最初は「給料が高いところがいいなあ」とか適当な感じでした。でも志望動機が書けず「あっ、これは自分がやりたいことではない。幼い頃から何となく興味があった建設業に携わりたい」って考え直したんですよ。

――周囲の反応はどうでしたか
 友達からは「本当に大丈夫?出来るの?」と結構言われました。親も最初は同じでしたが、私が建設業に興味があることは知っていたので「自分がやりたいことなら応援するから頑張りなさい」と。
 私自身、それまで技術者になりたいなんて考えてもなかったし、土木や建築を全く勉強していないので最初は無理だと思っていました。
 でも、長く働いている女性技術者がいることを知り、「技術者として認められるよう誰よりも努力して、現場で活躍したい」という思いが強くなり決めました。

――現在の業務内容は
 測量実習や、資格取得の講習会に通ったり、土木工事の基礎的なことを勉強し、現場に出るための準備をしています。何故測量が必要なのかからスタートし、測量レベルの見方やバックホウの操作など練習しています。小型車両系建設機械(整地等)特別教育と玉掛け技能講習資格は先日取得できました。安全については、現場パトロールに付いていって、実際の作業内容と危険個所を見て勉強し、CADや書類作成にも取り組んでいます。

――入社して約1カ月過ぎましたが、イメージは変わりましたか
 現場の人たちが簡単そうにやっている作業も、自分でやってみるとすごく難しかったり、色んな知識が必要だったり、覚えることが沢山あり思っていた以上に大変です。
 でも、最初は全くわからなかった測量や建機操作も、練習している内に出来るようになったり、「こういうふうにやるんだ」とわかってくるのが楽しいですね。

――土木工事の魅力は何でしょうか
 以前は、土木と建築の違いすらわからず、道路工事や河川工事など気にも止めていなかったのですが、知って現場を見て「当たり前にあるものを当たり前に作っている人がいて凄い。どうやって出来るんだろう」と興味がわくようになりました。
 これから何十年と形に残るものを作ることに関われるのがすごく魅力的で、自分が関わった工事が終わった時の達成感はすごく大きいものだろうと思います。

――将来の夢を教えてください
 今は、色んな事を知って出来ることを増やし、現場の役に立てるようになるのが目標です。将来は、一級土木施工管理技士の資格を取得し、女性の視点からアドバイスして会社に貢献できる技術者を目指しています。
 また、友達からは「女なのに、女だから」とか言われるけれど、建設業に興味がある女性から「女性でもこの業界で活躍できるんだ。入りたいな」と思われるようになって、あとに続く女性が増えてほしいです。

――建設業に興味を抱く若者や女性へのメッセージを
 建設業の事を何も知らずにこの業界に入り、毎日が初めての挑戦です。そのうえ男性ばっかりで不安だったのですが、一つひとつ教えてくださる社長や、上司、先輩方のおかげで少しずつわかってくるようになりました。
 自信が無くても「自分のやりたいこと、色んなこと」に挑戦するのが大事だと思います。自分の努力次第で男性社会の中でも活躍できると信じています。今は、自分の興味があることを仕事にできて良かったと思っています。

                 ◇   ◇   ◇
土木業界の先駆者に
九建 新永 隆一代表取締役社長

【経験不要】
 就職フェアでは「手に職を付ければ、結婚して北海道に行っても、建設会社で技術者として働けるよ」と話した。工業系高校土木科に女性は殆どいないが、普通高校にも建設業に興味を持つ女子生徒は必ずいる。全く基礎勉強をしていなくても、入社後に教えるので心配ない。大塚さんは飲み込みが早く、思っていた以上に出来るので、これまで一番若かった土木科卒3年目の男性社員が「勉強しなきゃ」と言い出した。競争心が出て嬉しい。
【女性の目線と感性】
 歩道を例に挙げれば、女性はハイヒールがグレーチングで傷つくとか、転ぶとか、乳母車から手を離しても大丈夫かとか…。女性目線でアドバイスできれば変わっていく。現場も綺麗になり整理整頓されれば、安全にも繋がる。労働者不足だからという理由ではなく、女性の感性を業界に生かして貰うため採用した。道路や河川など土木工事に女性が携わるのは必要なことだ。
【環境整備】
 入社にあたり、労務士を招いて全員でセクハラ勉強会を開いた。現場では初めての女性。他社員も戸惑っていたので良かった。施設整備では専用のシャワールームとロッカーを提供した。大塚さんには「先駆者なんだから、後輩のためにも遠慮無く言いなさい」とお願いしている。改善すべき点は改善し、業界団体や発注者にも女性の意見を伝える。
【綺麗にお洒落に】
 着替えを必ず持ってくるよう言っている。汚れないよう綺麗に効率よく仕事しなさい。ネイルや髪染めも仕事に支障がなければ大丈夫だよと。制服も大塚さんに選んでもらった。外で仕事するのだから、自分が気に入った制服で、お洒落したほうがいい。かっこいい女性がかっこよく現場で仕事をしたら、若い子も業界に興味を持つはずだ。
【現場での経験8割】
 土木技術は、机上で教えたからできるものでは無く、現場での経験が8割を占める。だから、若い頃から経験を積ませないと、世の中にマッチしたものは造れない。10年後、20年後のことを考え、若い人が興味を持って入ってくれるよう、業界も行政も考えていくべき。
2015.5.7掲載

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