猿渡慶一 熊本県土木部長に聞く
新規投資と維持管理のバランス大切


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 熊本県土木部長に就任した猿渡慶一氏は、西日本建設新聞社のインタビューに応じ、本格的な維持管理の時代を迎える中で、新規投資との適切なバランスが大切であることを強調した。
 九州を支える広域防災拠点構想の実現に向け、交通基盤整備の必要性を指摘。疲弊している業界に対しては、「公共投資の安定的確保とともに、建設業団体や専門工事業団体等と連携して若手技術者の確保・育成や労働環境の改善に努めていきたい」と話した。



――蒲島県政2期目の折り返し年度での部長就任となります
 知事が言われている、取組みの「加速化」、成果の「見える化」、施策の「核心を突く」―の視点で事業を重点的に展開する。(幸せ実感くまもと4カ年戦略の)「百年の礎を築く〜すべての道はくまもとに通じる〜」に基づき、九州中央自動車道、南九州西回り自動車道、中九州横断道路、有明海沿岸道路などの幹線道路ネットワークの構築や、熊本天草幹線道路整備、連続立体交差事業などに取り組む。「アジアとつながる」では、フードバレー構想の実現など県南地域振興に繋げるため、八代港の大型ガントリークレーンや都市計画道路南部幹線の計画を進める。
 一方、社会資本が老朽化し本格的な維持管理の時代を迎えるので、その対応も急務となってくる。新規投資と維持管理・更新の適切なバランスが重要だ。
 様々な課題がある時期に土木部長を命じられ、やりがいと責任の重さを感じている。土木部全職員の知恵を集めて、一つ一つの課題に対応していきたい。
――今後、維持管理に必要な予算が増え、併せて社会資本の整備も進めていかないといけない難しい舵取りが求められてきます
 本県は自動車交通に依存する割合が高い状況にも関わらず、道路改良率は全国平均や九州平均を下回っているなど、社会資本整備が十分とは言えない。
 維持管理においては、10分野の長寿命化計画策定を終え、策定中が2分野、今後策定予定が3分野あり、27年度には全15分野の計画を作る。一方で、国は国土強靱化地域計画策定ガイドラインの作成や公共施設等総合管理計画の策定要請の通知などを行っており、迅速に対応していきたい。
 南海トラフ地震の発生時に九州東側の被害が大きくなると言われている中、県は「九州を支える広域防災拠点構想」をまとめた。熊本には、陸上自衛隊の九州を統括する西部方面総監部や九州南部を管轄する第八師団司令部があり、人口あたりの病院数も全国レベルより多い。コンテナ輸送が可能な熊本港、八代港もあり、九州の防災拠点になれる。この構想を後押しするためにも、中九州横断道路とか九州中央自動車道などの必要性が増してくる。国に対し、そういった提案もしていく必要があるだろう。
――熊本広域大水害の発生から7月で2年経ちます
 白川改修事業については、熊本市工区の家屋移転240戸中、225戸の契約を終え(平成26年3月末現在)、一部掘削などにも着手している。黒川は、内牧の改修に着手し、協議会等で治水対策の方向性と計画案を了解頂いているところだ。阿蘇・菊池の土砂災害については、災害関連緊急砂防事業17カ所中、4カ所完了し、残り13カ所も梅雨入りまでの完了を目指している。砂防激甚災害対策特別緊急事業30カ所は、5カ所が完了し、残りは27年度中の完了を目指している。
 ほか、緊急避難道路の機能を併せ持つ県道内牧坂梨線の整備も進めている。いずれも、できるだけ早期の復旧と創造的復興に引き続き取り組む。
――26〜27年度の2年間を対象期間とする「新建設産業振興プランアクションプログラム(後期)」が始まりました
 前期までの取組みに加え「公共事業費の安定的確保」や「若手技術者等の確保・育成」などの事業の重点化・具体化に取り組む。主なものとして、現場見学会や魅力発信展示会などの「建設産業イメージアップ戦略事業」、研修・資格取得や労働環境改善への補助を行う「建設産業若手技術者等育成事業」、建設機械を取得し災害等に備える企業に資金融資金利を一部補助する「建設災害等対応金融支援事業」―がある。
 建設産業は、20年近い公共投資の減少により、思っている以上に疲弊している。公共投資の安定的確保とともに、技術者・技能者の高齢化や、新入職者の減少などの問題に対し、建設業団体、専門工事業団体、行政とが一体になって取り組む。
――業界へのメッセージをお願いします
 熊本広域大水害時には、阿蘇地域などでの応急復旧や有明海までの漂流物撤去・回収に対応いただき、また、4月の鳥インフルエンザ発生時には、重機やオペレーターなど24時間体制で対応いただくなど、迅速な対応に感謝している。建設業協会におかれては、指定地方公共機関となり、県の防災を担う一員として今後ともご協力をお願いしたい。県としても建設業のこのような活動・役割をしっかり広報していく。
 今後も、社会資本の整備、維持・管理・更新、防災、さらには地域の雇用・経済の担い手として、社会貢献や法令遵守に引き続き取り組んでいただきたい。
2014.5.8掲載

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