就任インタビュー
戸塚誠司 熊本県土木部長

 「競争勝ち抜く技術力、得意技を」


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 熊本県土木部の戸塚誠司新部長は、西日本建設新聞社のインタビューに応じ、今後の建設業経営について「競争に勝ち抜くための技術力、さらには得意技を培ってほしい」とメッセージを送った。厳しい県財政を背景に、公共事業予算が減少し続ける中にあっても、財政再建との整合性を図りながら、 「経済活動を支える社会基盤整備を着実に推進する」 姿勢を強調。建設産業振興プランについても、現プランの検証、業界団体等の意見を参考にとりまとめを急ぐ方針を示した。



――九州新幹線の全線開業まで1年を切ったなかでの部長就任になりますが。
 新幹線の開業は県民だけでなく九州の悲願。土木部長として全線開業を見届けることには感慨深さと責任の重さを感じる。限られた期間にあれだけの用地買収の事務量をこなすことができたことは奇跡に近い。職員にとっていい経験になり、そこで培ったものは県の大きな財産になった。
 新幹線以外については、経済活動を支える社会基盤整備を着実に推進する。県の財政再建との整合性を図りながら、限られた予算の中で優先度を峻別し、重点的、効率的な事業の執行に努めたい。
――土木技術管理室時代には、全国に先駆けてCALS/ECへの取り組みがはじまりました。
 システムの全体像が見えないなかでの出発だったが、ITは避けて通れないという時代の要請のなか、「まずはデジタル情報に慣れる」ことを第一目的とした。
 ある程度習熟してきた今、生かせる情報が何なのかを考えていく段階にきている。予想を超えるような効果が一つでも二つでも出てくればまた、CALS/ECを進めるうえで大きな後押しになるという期待を持っている。
 技術の進展が急速なため、どう作り込むかまだ見えない所もあるが、新しいものを手がけるというパイロット的な部分と底上げ的な部分の両面を見て進める必要がある。
――公共投資が削減され、建設業者の経営はかなり厳しくなっています。
 我々には発注者という仕事だけでなく、事業者、管理者という面があり、建設産業と共存していくというのが基本的な姿勢。そのためにも、経営能力だけでなく競争に勝ち抜くための技術力、さらには得意技を培ってもらいたい。
 今後、整備中心から維持管理の時代に移っていくので、その分野の技術者、技能者、専門工事業者と幅広い層が必要となり、次世代の人材を確保していくことが重要。通常管理的な修繕や補修は、地元でやっていくのが基本だ。
 県として、低入札対策をどうしていくかも大きな課題。社員の待遇とか、会社がそれなりの企業体として存続するのに必要な経費、利益を確保することが重要。入札契約制度についても、試行錯誤を重ねながら、より良い制度にしていく努力を続けなければならない。
――企業合併や新分野進出は、既にその余力も残っていないという意見もありますが。
 経営力の向上、力の結集という意味では、合併はひとつの方法と考える。だが、力を向上させる所をきちんと持たないと、ただ集まっただけでは問題がある。方向性を持った合併が大事だ。
 新分野や異業種進出については、従業員の雇用を維持していく上でも意味がある。本業を強化するのが本来の姿だが、経営の薄くなった部分を新しい分野で補うのも手法のひとつ。どの分野がいいかは、各企業の努力、先見性に左右されるところ。
――昨年12月の県議会で知事が熊本県建設産業振興プランを前倒しして見直すと表明されました。
 庁内での委員会を立ち上げた。平成16年に現在のプランが出来たが、建設業を取り巻く環境も当時と変わっている。検証結果や業界団体等の意見を参考に、新しいプランをまとめたい。前倒しの要望が強いので、何とか今年度の前半には素案をお見せできるよう努力していく。

とつか・せいじ)昭和26年7月22日生まれ、58歳、益城町在住。
 昭和50年熊本大学工学部卒業、平成11年熊本大学大学院修了 博士(工学)学位取得
 職歴=昭和50年熊本県採用、平成8年土木部道路建設課主幹(橋梁係長)、11年氷川ダム管理所工務課長、13年土木部土木技術管理室課長補佐、17年熊本駅周辺整備事務所長、19年土木部道路整備課長、21年土木部土木技術管理室長。
2010.05.03掲載

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