技術者育成と雇用安定を支援
熊本県商工観光労働部 労働雇用総室産業人材育成室
 労働雇用政策監(兼室長) 辻本英子


辻本英子氏

 熊本県が18年4月に施行した組織機構改正により商工観光労働部「労働雇用総室・産業人材育成室」が新設された。これまで労働企画、労働福祉、雇用対策業務を行なっていた労働雇用課と公共職業訓練校、技能訓練などを支援していた職業能力開発課を一本化。今まで以上に、雇用対策、技術者育成などの施策が総合的に行えるようになった。初代室長に就任した辻本英子氏に今後の取り組みなどを聞いた。



――技術者・指導者の減少が予想される2007年問題について
 熊本県の場合、中小企業の割合が高く、多能工(一人でいくつもの仕事をする)の技術者・技能者が多いため、技術・技能の継承が大企業と比べスムーズに行われているのではないかと思う。今のところ、県としては、具体的な対策は取っていない。
 一方、「高齢者雇用安定法」が改正され、65歳までの継続雇用に向けて、事業主は@定年の引き上げA継続雇用制度の導入B定年の廃止―のいずれかの措置を講じなければならないこととなった。この5年の期間をうまく活用して、熟練技術者・技能者の方が、今までに培った技術、技能を後継者に伝えてもらいたい。
――現場で即戦力に繋がる人材育成への取り組みは
 県としては、若い技術者の育成を図るため熊本高等技術訓練校、技術短期大学校の2施設を開校している。実技に重点を置いた訓練を重ね、年に2〜3週間程度、現場で働きながら実社会を体験してもらっている。
 また、訓練校では、若年者の早期就労を目指して、日本版デュアルシステムに取り組んでいる。昨年度は、建設ITビジネス科を設け、訓練生11人がそれぞれの受け入れ先企業に巣立って行った。
 今年度も6月に、エキスパート養成科(電気・IT)を開設したところ、16人が入校した。9カ月の訓練期間で技術・技能の向上や資格取得に励んでいる。最初の5カ月間は、第1種電気工事士の取得を目指し、その後、受け入れ先企業で4カ月間の実習とパート就労を行い、技術を学んでいく。たとえ就職が出来なかったとしても資格が取れた≠サれだけでも今後の人生のプラスになるので、頑張って欲しい。
――技術者に対する技術向上への支援は
 県内には、単独または共同で職業訓練を行う16校の認定職業訓練校がある。
 建設業関連の訓練では、左官や木造建築、建築塗装科などがあり専門課程・普通課程で12科目、短期課程で18科目を実施している。5人以上の受講者が集まり、県知事から認定を受ければ訓練を受ける事ができ、訓練の際に必要な運営費や経費の3分の2以内に相当する額の助成があるので、是非活用してもらいたい。
 また、企業からこういう技術を学ばせたい≠ニ言う声があれば遠慮なく相談して欲しい。多くの技術者・技能者の育成と雇用安定のため出来る限り対応していきたい。
――これからの若い技能者に求めること
 技術革新が進む一方で、人の手による優れた技能が改めて見直されている。若い人たちには、いろんな視点を持ちながら優れた技能を身につけてほしい。その過程には、辛いこともあるだろうが、ひとつ一つの積み重ねが基礎となる足下を固め、県内の産業を支える。素晴らしい技能者に育って欲しいと期待している。
 個人的な意見を言わせてもらうと、多くの女性の方にも建設業の仕事に就いてもらいたい。体力がないからではなく、体力で勝負できない時は、知恵で勝負ができるはず。企業も、女性だからダメと決め付けず、やりたいと思ってる人達には、もっと道を開いて欲しい。
――今後、県が行なう技能イベントは
 11月11日〜12日に熊本市の辛島公園、サンロード新市街で開催する「技能ふれあい・体験ストリート2006」に向け準備を進めている。優れた技能の実演や作品展示、実技体験コーナーなどを予定している。県民の皆さんに卓越した技能の重要性、必要性を強くアピールして行きたい。
2006.08.03掲載

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