契約・検査部門を一元化、「技術力の向上図り質の高い施工を」
熊本市総務局契約検査監 濱田清水氏



熊本市は、4月の組織改編で企画財政局や建設局などに分かれていた契約・検査部門を集約。総務局に「」契約検査室」を設置した。同室トップの濱田清水契約検査監に、業務内容や、入札契約制度のあり方、市内建設業者の育成策など今後の取り組みを聞いた。

−契約検査室を設けた経緯は
 契約・検査業務はこれまで、企画財政局調達課、建設局監理課、同局工事技術検査室−と3部署で実施。工事を組織論的に見ると、入札、契約、検査と一連の作業を事業課と同じ局でさばいており、これらを分離して透明性を高めるという観点から組織を再編した。もちろん、本市が進めている行財政改革の一環である。 
−どういう業務を担当するのか
 それぞれの組織がこれまで持っていた業務を、ほぼそのまま引き継いでいる。監理課の契約や入札、業者登録・格付けなどを工事契約班、調達課の物品関係等の購入・契約・見積などを物品契約班、工事及び物品の検査を検査班が担当する。小規模な入札契約など監理課以外の事業課で行われていたものは、現段階では従来どおり。ただ本市全体の契約事務の一元化が目的であり、将来的には入札関係を全て契約検査室で取り扱うことが目標だ。
−企業会計である水道局や交通局の入札・契約は
 従来どおり、各局が対応し、一本化はしない。しかしながら私どもは同じ熊本市であり、同様の方向性で進むのでは。経済性や迅速性の考え方など特異性もあり、それぞれの事業管理者のもと、そられの考え方を活かしながら、システムを構築されるのではないか。
−組織改編による利点は何か
 一元化による効率化は言うまでもないが、契約と検査関係を同室に設けたメリットを最大限に活かしたい。競争入札である以上、金額で落札者を決めるのは当然だが、工事の適正化を図るためには技術力の向上が不可欠だ。工事検査員がもつ経験や技術を専門的な視点から活かし、連携することで質の高い施工ができる。
−新しく取り組む施策は
 「電子入札の導入」「工事現場立入検査の実施」「発注の平準化」の3点。電子入札については、17年度から土木・建築の大型工事で実施する。工事検査については、現在、完了検査が主だが、組織改編のメリットを活かし、工事途中に立入検査をすることで不良・不適格業者対策を行いたい。また、電子入札の開始に併せ、入札情報公開サービスを利用し、年間発注工事の平準化にも取り組んでいきたい。
−小規模修繕希望者登録制度については
 30万円以下の施設修繕の契約に業者登録制度を導入する。ガラスやトイレ、雨漏りなどの施設修繕が対象で、業種ごとに名簿を作成。名簿の中から複数の業者に見積もりを依頼し、最低見積もりの業者と契約する。業種によっては免許が必要となるが、基本的には熊本市民であれば建設業の許可は必要なく、ゆるやかな条件としたい。責任ある施工と技術力の向上に繋げることで、地域経済の活性化を図りたい。6月から募集を開始する予定だ。
−4月から情報公開サービスがスタートしたが
 理由は、透明性と迅速性を高めるということに尽きる。ホームページ上で誰もが閲覧できることで、市民にとっては透明性が、建設業者にとっては、事務所にいながらにして、いつどのような入札があるかということが随時、情報を把握でき、電子入札の場合は、パソコンで入札に参加できる。発注見通しについても、これまでの四半期毎の公表から、1年分の予定を公表する。業界の要望も強かったところだ。
−郵便入札の適用範囲を段階的に拡大させているが、今後のスケジュールは
 16年度に続き17年度も下位ランクへの拡大を予定していたところであるが、公共事業が落ち込み、建設業界が厳しい経営状況に立たされていることから、社会経済情勢をきちんと見極めたうえで対応していきたい。
−21年度までの中期財政計画のなかで、投資的経費を各年度280億円と試算しているが
 景気・経済情勢が良かった時は400〜450億円程度あった投資的経費も17年度は230億円にまで減少している。マーケットが縮小する一方で業者数はほとんど減っていない。1社あたり工事の受注回数をみれば、統計上は大体各ランクとも2年に1回程度の計算になるのでは。
−最低制限価格制度を2月に導入したが効果は
 一部の業種で予定価格の5割〜6割台という極端な低入札もあったが、制限価格を設けることで、予定価格に対する率の底上げになった。そういう意味では各企業が適正利潤を確保し、将来に向けての投資等に繋がっていくのでは。業界からは仕事量を増やしてくれという意見も聞くが、この経済情勢のなか公共事業を伸ばすのは無理。最低制限価格制度は今後も続け、情勢を見極めていきたい。
−17年度の格付け基準見直しのポイントは
 16年度は、土木を例に取るとランク数を6段階から4段階へと圧縮し、発注金額もAランクの場合、8000万円を4000万円に下げた。この激変を緩和するため、17年度はランクごとの業者数や発注件数を考慮し、土木、建築、電気、舗装のAランクで発注金額を引き上げた。どのランクの業者も同程度の受注率になるのが基本的なスタンスだ。
−県内自治体のトップをきって4月から電子入札をはじめた。今後のスケジュールは
 17年度は土木・建築のAランクで概ね1億円以上を対象にしている。各課からの事業計画をみないとわからないが、16年度の発注状況で推測すると20〜30件程度になるのではないか。17年度中の適用範囲拡大は現段階では考えていない。
−電子納品については、県に比べ対応が遅れているようにも感じられるが
 電子納品は建設局管理部建設総務課が担当。CALS/ECの基本計画を17年度中に策定する。国や県の入札に参加する比較的大規模な建設業者に比べ、本市の場合は中小企業が多い。IT化という時代の流れのなかで対応していかなければならないが、市場機能が働いていない状況での導入は頭が痛い。
−地元建設業者の育成・支援についての考えは
 建設産業は、地域経済の一翼を担う重要な産業だ。市内建設業者が置かれている現状を把握するため、16年度にアンケート調査し、会社の形態や困っていることなど生の意見を聞くことができた。現在、建設局において意見のとりまとめと分析を行っており、この結果を踏まえ、行政として「何ができるのか、何をすべきか」検討することになる。地域経済の活性化と行財政改革という一見相反するこの二つのどこに接点があるか、見つけ出さなければならない。

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濱田清水(はまだきよみず)昭和24年5月17日生まれ。昭和47年入庁、平成3年振興課長補佐、4年職員研修所長補佐、6年任用課長、8年東京事務所次長、10年水道局企画財政課長、13年水道局総務部長、16年建設局次長、17年総務局契約検査監。
2005.05.26掲載

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