木村盛好・木村建設(株)社長
〜5年先、10年先を見据えた新技術を導入〜
熊本県の『平成15年経営事項審査結果に基づく完工高ランキング』の建築部門で、八代市の木村建設(株)が2年連続トップとなった。
昭和38年の創業以来、モットーのひとつにも掲げている"自分が住むつもりで誠意をもって家を造ろう"を基本姿勢に、設計から施工に至るまで一貫した自社作業システムの充実強化を図ることによって、年々業績を伸ばしてきた。特に、メインの建築部門においては、独自の工法を導入し、ホテル・分譲マンション・一棟建てを業務の三本柱として、県外における展開にも積極的に取り組んでいる。
昨年に引き続き、建築部門で90億円以上の完工高を記録した木村盛好社長に、経営のノウハウ、今後の戦略などについて聞いてみた。
−売り上げの90%は民間工事ということですが
平成元年にバブルが崩壊し、役所の工事は激減して民間主導になると既に感じていました。15年前から準備して勉強を積み重ねた結果が、今の業績につながったと思っています。
平成元年頃に木村建設独自の"HQ"ハイクオリティマンションを開発し、日奈久、八代、熊本に造った建物を全国的に広めました。その結果、全国から約200人が視察にやってきて工法を習得して帰りました。熊本県外での業績が6割を占めているのも、その当時の私の弟子が全国にいるということが大きな力になっています。
それと、ホテルの場合、約20種くらいの業種があるのですが、型枠をはじめ10業種くらいは私の会社で全国を回れることが大きな強みですね。メンバーが変りませんので説明する必要も無く、チームワークが取れているところが他の企業にないところですね。
−地場企業として、大手・中堅業者に対しての対抗手段などはございますか
ドイツ、イギリス、カナダの工法を導入し、工期を2分の1に短縮できる"大型・型枠システム"ですね。普通、工期は階数プラス1、つまり11階建の建物は工期12ヶ月が常識なのですが、我々は6ヶ月でやることができます。
具体的には、従来、日本の工法で使用される型枠(900o×1800o)よりも大型の型枠(900o×2700o)を使用します。この大型型枠を必要な枚数だけ連結させ、クレーンで持ち上げて設置します。例えば10枚つなげれば、9mの型枠を一挙に設置することができますので、ホテルやマンションなどの大きい面積の建物の方が効率的に作業できるというわけです。
この工法は、ドイツ、イギリス、カナダの3つの工法を巧みに使ってやっていますので、簡単には真似できないというよりも、教えてもできないというのが実際のところです。
−新技術について取り組んでいることはございますか
地球環境にやさしく効率的な洗浄技術として注目を浴びているドライアイス洗浄に取り組んでいます。
自動車工場や食品工場の心臓部となる施設や機械類を、細かいドライアイスペレットを圧縮エアーで吹き付け、その衝撃力で付着物や汚染物を剥離させるシステムです。この技術は、いかなる科学添加剤も必要としないため環境にやさしいだけでなく、多くの部品は機械を分解することなく洗浄できますので生産性の向上につながります。
実際にパン工場や自動車工場から注文が来ており、年間4億円の売り上げを目標にしています。
−新規で取り組んでいる事業はございますか
今年の2月、熊本市の東バイパス沿いに総合資産運用会社を開設しました。建築前における土地調査、診断、資産運用、計画のアドバイスなど、すべて市場調査したコンサルティング業務を行っています。
それと東京に幸洋コーポレーションと共同で新会社「絆(きずな)コミュニティ開発」を立ち上げ、神田や銀座にある2階から3階建ての古い木造建築物を買収し、リニューアルした物件開発を行っています。
このほか、コンクリート補修の先進国であるドイツSTO社の技術を導入したコンクリート劣化に関する新規事業にも取り組んでいます。優れた技術によるモルタル吹付や高圧クラック注入等で、コンクリートのひび割れを補修・補強するもので、鉄道や高速道路の補修工事で高い評価を得ています。
今後もこれらの事業に重点を置いて、5年先、10年先、15年先を見据えた取り組みを行っていきたいと考えています。
−新幹線開通に伴う新八代駅周辺整備について、提言などはございますか
NPO法人地方活性化研究会を設立して、新幹線新八代駅周辺の開発計画を提案しようと現在、勉強会を行っています。農協や県OBなどメンバーに、今年5月の発足を目指しています。 |